夏色ティータイム 5
事務所に戻った二人はさっそくアフタヌーン・ティーの準備をするためにキッチンに立つ。
「何から準備するんだ？」
「そうですね…フルーツティーから準備しましょうか。雑誌に載っていた作り方だとあらかじめ作っておいて冷蔵庫で冷やすようなので、その間にサンドイッチやお菓子を作ればちょうどいいと思いますよ」
「そうか、わかった。こういうのに関しては俺はサッパリだからな、リアラに任せる。指示してくれ」
「わかりました。じゃあ、ダンテさんは紅茶を淹れるためのお湯を沸かしてくれますか？その間にティーポットを二つ用意しておいてください。いつもの紅茶を淹れるための物とフルーツティーを作るための物で別々に必要なので」
「わかった」
さっそく、二人でそれぞれの作業に取り掛かる。ダンテがケトルで紅茶用のお湯を沸かしている間に、リアラは冷蔵庫からレモンとオレンジを取り出し、水で洗ってから包丁で輪切りにする。それを更に八当分にして、用意したボウルに入れるとグラニュー糖を振りかける。ダンテの用意した紅茶を淹れるためのティーポットに茶葉を入れ、サンドイッチに入れるキュウリやハムを切っていると、ダンテが声をかけてきた。
「リアラ、お湯沸いたぞ」
「あ、ありがとうございます。じゃあ、このティーポットにお湯を入れてもらえますか？」
「ああ」
頷き、ダンテは言われた通りに茶葉の入ったティーポットにお湯を注ぐ。ふわり、と紅茶のいい香りが湯気と共に漂い、その匂いにリアラの顔が綻ぶ。
「いい香り…」
「本当に紅茶が好きだな、リアラは」
「紅茶の香りって、ほっとするんです。ダンテさんは紅茶、嫌いですか？」
「嫌いだったら飲んでないだろ？」
「ふふ、そうですね」
和やかに会話を交わしながら、二人は準備を進めていく。水と卵の入った鍋を火にかけたところで、そろそろいいかな、とリアラはダンテに声をかける。
「ダンテさん、紅茶の入ったティーポットと空のティーポットをこっちに持ってきてくれますか？」
「わかった」
ダンテがキッチンの真ん中にあるテーブルに二つのティーポットを持ってくると、リアラは空のティーポットにもう片方のティーポットにグラニュー糖をまぶしていたレモンとオレンジを入れる。
「茶こしで濾しながら入れると紅茶の茶葉が入らずにきれいにできるらしいですよ」
「手間をかける程、ってやつか」
「そうですね」
頷いて、リアラは紅茶の入ったティーポットと茶こしを持ったが、何かに気づいたのかあ、と声を上げる。
「ティーポットの蓋、押さえてないと危ないかも…」
「リアラ、そっち貸せ」
そう言うと、ダンテはリアラの左手から茶こしを取る。
「こっちは俺が持っててやるから、リアラはそれ淹れてくれ」
「…ありがとうございます」
店での出来事を思い出し、リアラは素直に礼を述べる。茶こしからずれないようにゆっくりとティーポットの紅茶を注ぐと、ガラスのティーポットに明るいオレンジ色が満たされていく。ティーポットの中の紅茶を全て注いで蓋をすると、うん、きれいにできた、と満足気にリアラは頷く。
「後はある程度冷ましてから冷蔵庫で冷やせば完成ですね」
「楽しみだな」
「はい」
嬉しそうに笑うリアラに、ダンテの顔も綻ぶ。
「後は何作るんだ？」
「たまごのサンドイッチと、お菓子にマドレーヌを作ります。茹で卵ができるまでにはまだ時間がかかるので、マドレーヌを作るのを手伝ってくれますか？」
「もちろん」
残りの準備をするべく、二人は仲よく並んで作業を始めた。
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