夏色ティータイム 4

「ーっ、もういいです!ティースタンド、早く探しましょう!」


そう言って反対側の棚に向かう恋人にククッと笑みを零しながら、ダンテも後に続く。リアラの隣りに並び、彼女の視線の先を追えば、棚の一番上に並ぶティースタンドを見ているようだった。


「うーん、ここからじゃちょっと見辛いな…でも、手が届かないし…」


呟き、一歩二歩下がったリアラは再び棚に並ぶティースタンドを見始める。周りの人に比べれば少し身長の低い彼女にはティースタンドのある位置は高さがあって届かない。背伸びしても指先が棚に届くかどうか、といったところだろう。考え性な彼女のことだ、おそらく無理に物を取ろうとして壊してしまうよりは離れたところから見た方がいいと考えたのだろう。


(言えば取ってやるのにな)


まあ、できることは一人でやってしまう彼女のことだ、どうしても、とならない限りは周りの人に頼んだりしないだろう。それにまだ選んでいる最中だ、もう少し様子を見ておこう。
そう思って黙って様子を見ているダンテの隣りでしばらく視線を右に左に移していたリアラは、ある一つに目を留めた。


(あれがいいかな…)


手が届かないし、店長さんに頼もうかな、そう思ったリアラが視線を下ろした時、頭上から声をかけられた。


「これか?」

「え?」


隣りを振り向くとダンテが棚に手を伸ばしていて、並ぶティースタンドの一つを手に取る。流れるような動作で渡されたそれを慌てて受け取ると、それは確かに自分が取ってもらおうと思っていた物だった。


「遠慮なんかしなくていいから、困った時は俺に言え。お前の頼みならいくらでも聞いてやるから」


ポン、と大きくて温かい手が頭に乗せられる。見上げた先の優しくて柔らかな笑みに、ずるい、とリアラは思う。さっきまでからかっていたかと思えば次には優しくしてくれる。ちゃんとこっちの様子を見て、行動してくれる。


「…ありがとう、ございます…」


やっぱり、この人には敵わない。赤くなった顔を隠すように俯きながら告げると、優しく頭を撫でられたのだった。

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