夏色ティータイム 2

「あ、ここです」


事務所を出て二人で話しながら歩くこと数十分。見慣れた建物にリアラは足を止める。


「へえ…何だか年季の入ってそうな店だな」

「三十年続いているお店らしいですよ。紅茶の種類がたくさんあって、見ていてすごく楽しいんです」


中に入りましょう、と促し、リアラは緑色の扉を開ける。彼女に続いてダンテも店の中に入る。
年季の入った外見に比べ、中は思っていたよりもきれいだった。両側の壁には棚が整然と並べられており、右側には筒型の金属の缶や透明な袋に入ったティーバッグ、左側にはティーカップやティーポットなど紅茶を飲むために使う道具が並べられている。中央には丸いテーブルが置かれ、白いテーブルクロスの上には袋詰めされたクッキーやマドレーヌなどの茶菓子が籠の中に並べられていた。


(そういえば、こうやってリアラと一緒にこの店に来たのは初めてだな)


リアラが事務所に住み始めてから彼女の影響で紅茶を飲むようになったダンテだが、紅茶についての知識はさっぱりで、なくなった時は彼女が買ってきていたため、実際にどういう風に買っているか見たことがなかった。


「あ、あった!」


自分が考えごとをしている間に何かを見つけたのか、彼女の弾んだ声が響く。声のした方へダンテが視線を向けると、リアラが棚に並んでいた缶の一つを手にしているところだった。


「何探してたんだ?」


ダンテがリアラの後ろから顔を出して彼女の手元にある缶を見ると、白い紙でできたラベルで『ニルギリ』と書かれていた。確か、紅茶の種類の一つだったか。


「これを探してたのか?」

「はい。さっき事務所で読んでた雑誌にフルーツティーの作り方が書いてあったので、作ってみようかと思って。癖のない紅茶がいいらしいので、ニルギリにしてみようと思って探してたんです」


そう言うと、リアラは店の奥ーレジに向かい、そこにいた老齢の男性に何かを伝える。男性は笑顔で頷くと彼女の手から缶を受け取り、一言二言何か話した。何か変なことでも言われたのだろうか、戻ってきたリアラの頬は薄らと赤く染まっていた。


「どうした?顔が赤いぞ」

「あ、えっと、その…」


リアラは恥ずかしそうに口ごもり、視線をさ迷わせる。

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