夏色ティータイム 1

「ふぅ、サッパリしたぜ」


シャワーを浴びて一息ついたダンテは、リビングへと続く扉を開ける。ミネラルウォーターでも飲もうとキッチンへ向かう道すがら、ソファーで雑誌を読むリアラの姿が目に入った。


「………」


音に敏感な彼女がこちらに気づかないのを見るに、雑誌を読むのに集中しているらしい。おそらく考えごともしながら。先程、依頼から帰ってきた時も雑誌を読んでいたから、余程興味のある内容のようだ。どんな雑誌を読んでいるのか気になったダンテは、足音を立てぬようにゆっくりとリアラに近づく。


「何読んでるんだ?」

「!」


後ろから腕を回して耳元で尋ねると、彼女の肩がビクッと跳ねた。急に目の前に現れた腕と肩にかかる重みに驚いたリアラは、重みを感じた方を振り返る。


「ダンテさん…」

「驚かせて悪かった。こっちに気づかないくらい、それ読むのに集中してたみたいだからな、何を読んでるのか気になってな」


どれどれ、とダンテがリアラの読んでいた雑誌を覗き込むと、色とりどりの菓子やサンドイッチが並べられたティースタンド、紅茶の入ったティーカップが写真に写っている。他にもいくつか写真が載っていたが、同じ様式から察するにアフタヌーン・ティーに関する雑誌らしい。


「アフタヌーン・ティーか。リアラはこういうのやってみたいのか?」

「興味はありますね。こういうのって、少し贅沢な感じがしますね」


道具を揃えるのにはお金がかかりそうですけど…とリアラは苦笑する。


「道具揃えるのにそんなに金かかるのか?」

「どうなんでしょう…私の勝手なイメージなので。ティーカップやティーポットは事務所にありますし、もしかしたらそれ程お金はかからないかもしれませんね」


まあ、サンドイッチやお菓子を作っていたらそれなりにかかると思いますけど、とリアラは言う。ふーん、と相づちを打って、しばし考えを巡らせたダンテはリアラに問いかける。


「やりたいなら道具、買いに行くか?」

「え?」

「紅茶売ってる店ならそういうのもあるだろうし。お前がよく行く店にそういうの売ってるんじゃないか?」

「ああ…そういえば…」


リアラはお気に入りの紅茶の店を思い出す。あそこは茶葉以外に道具も品揃えが豊富で、アフタヌーン・ティーに関する道具も置いてあった気がする。


「それに、昨日で紅茶切れてただろ。ついでに買いに行こうぜ」

「…よく覚えてましたね」

「昨日、なくなったってお前がぼやいてたからな」

「でも、依頼からの帰りで疲れてるんじゃないですか?」

「リアラと出かけるなら話は別だ」


そう言ってこちらに笑いかけてくるダンテにくすりと笑みを零し、リアラは頷く。


「わかりました、なら行きましょうか。出かける準備してきますね」

「ああ」


ゆっくりと雑誌を閉じ、リアラは立ち上がって二階へ向かった。

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