Nursing song of bright blue 5
深呼吸をして、息を整える。
家族以外(ダンテさんは例外だ)の人に歌うのは、これが初めてかもしれない。
「……」
大丈夫、気持ちを込めて歌えばいい。
そう自分に言いきかせると、私は口を開いた。
「〜♪、〜、〜♪」
耳に残るメロディーに合わせながら、言葉を歌にして乗せていく。
白い世界に自分の声だけが響いていく。不思議な感覚がすると同時に、習慣のようなこの行為をすることで自然と肩の力が抜けて、私は歌うことに集中していた。
「〜♪…」
やがて歌いおわると、辺りを静寂が満たした。
その時、パチパチと手を叩く音がして、私は隣りを見た。
「すごくきれいな歌声だった」
ありがとう、という鈴さんの言葉に、私は顔を赤くして俯く。
「今のは、子守唄?」
鈴さんの問いに、私は頷く。
「あ、はい。私やダンテさんが生まれる前に私の母とエウ゛ァさんが考えた歌なんです」
私の大切な歌なんです、と言うと、鈴さんはそっか、と頷いた。
「でもそんな大切な歌、もらっちゃってもよかったのかな?」
「いいんです。誕生日だって大切な日でしょう?」
なら大切な歌を贈ってもいいはずです、と私が答えると、鈴さんは目を見開いて、すぐにクスクスと笑いだした。
「リアラちゃんって、おもしろい子だね」
「そうですか?」
うーん、と私が唸ると、鈴さんは再びクスクスと笑いだす。それにつられて私も笑みを溢す。
何だか鈴さんと距離を縮められたような気がした。
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