Nursing song of bright blue 4
「ねぇ…『前』ってどのくらい?」
「えーっと、10年前くらい、って言ってたと思いますけど…」
その時の会話を思い出しながら答えると、鈴さんはじっとこちらを見つめたまま、尋ねてきた。
「リアラちゃん…そっちのダンテっていくつ?」
「え?36ですけど…」
不思議に思いながら私が言うと、鈴さんはあんぐりと口を開ける。そして、戸惑ったように続けた。
「リアラ、ちゃんは…」
「ああ、私は23です。私とダンテさん、13歳歳が離れてるんです」
言いたいことがわかってやっと納得した私は、鈴さんにそう告げる。
「そうなんだ…。てっきり私、ダンテと同じ歳だと思って…」
「失礼ですけど、鈴さんはいくつなんですか?」
そう尋ねると、鈴さんは首を傾げながら答えてくれた。
「私?私は25。正確には今日で、だけど」
その言葉に、私は目を見開く。
「今日?今日、誕生日なんですか?」
「うん。もしかしたらもう日付変わっちゃってるかもしれないけれど」
そう言い笑う鈴さんを見てから、私は誕生日…と呟き、口に手を当てる。
偶然にも出会い、少ししか話をしていない人だが、こうやって誕生日に出会ったのも何かの縁なのかもしれない。
何か、渡せないだろうか。
ぐるぐると考えを巡らせていた私はあることを思いつき、あ、と声を上げた。
鈴さんがこちらを見る。
「リアラちゃん?」
「あの、よかったら、なんですけど…」
おどおどしながら、私は鈴さんに言う。
「歌を、プレゼントにしてもいいですか?」
私の言葉に、鈴さんは目を見開く。
「プレゼント?リアラちゃん、私に誕生日プレゼントくれるの?」
「はい」
コクコクと頷くと、鈴さんはくすり、と笑みを漏らした。
「律義だなあ、リアラちゃんは」
会ったばかりの人なのに、という鈴さんに私はふるふると首を振る。
「鈴さんの誕生日に会ったのも、何かの縁だと思うんです。せっかくですから、歌でよければ贈らせてください」
じっ、と鈴さんを見つめると、鈴さんは優しい笑みを浮かべて頷いた。
「うん、じゃあお願いしようかな」
「…!はい!」
思わず嬉しくなって、私は元気よく頷いた。
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