Nursing song of bright blue 3

「ええっと…」

「リアラ、リアラ・フォルトゥナです」


お互いにその場に座り込み、こちらを見てきた女の人がためらいがちに口を開いたことに、訊きたいことが何となくわかった私は、自分の名を名乗る。


「お姉さんの名前は何ていうんですか?」

「……鈴」


少し間を置いて名乗られた名に、そうですか、と私は頷く。


「じゃあ、鈴さんって呼んでもいいですか?」

「うん」


女の人−鈴さんが頷いてくれたので、お礼を述べてから、私は話を始めた。


「鈴さんは何でここに?」

「私にもわからないな…えっと、リアラちゃんは?」

「私も全然…」


鈴さんに尋ねられ、私はふるふると頭を振る。


「悪魔の気配はしないので、悪魔の仕業ではないのでしょうが…」

「だよね、そういうの感じないし」


後ろに手をつき、鈴さんは上を見上げる。
私はためらいがちに、鈴さんに尋ねた。


「あの…」

「ん?何?」

「さっき、ダンテさんとバージルさんの名前を口にしましたよね。知り合い、なんですか?」


鈴さんはああ、と思い出したように言った。


「私ね、あの双子の幼なじみなの。今はわけあってダンテの事務所に住んでるんだけど」


そう答えると、今度は鈴さんが私に尋ねてきた。


「あなたは何でダンテとバージルのことを知ってるの?」

「私の父とスパーダさんが昔からの友人で…。ダンテさん達が生まれてからも時々、お互いの家に遊びに行ってて…」


今はダンテさんの事務所に居候させてもらってます、と私が答えると、鈴さんはそっか、と頷いた。


「リアラちゃんのお父さんとスパーダさんが昔からの知り合いってことは、お父さんは悪魔?」

「ええ。魔狼っていう、魔獣の一族です」


スパーダさんのことも知っているなら、隠す必要もないだろう、そう判断して、私は答える。
鈴さんは顎に手を当てて、うーん、と唸る。


「魔狼かぁ…。聞いたことないなぁ」

「そちらの世界にはいないのかもしれませんね」


お互いの住む世界が違うのだ。『魔狼』という存在自体がない可能性もある。


「魔犬のケルベロスと親戚のようなものだと思ってくださればいいですよ」

「ああ、ケロちゃんか!なるほどなぁ」


うんうん、と頷く鈴さんに、私は首を傾げる。


「ケロちゃん?そちらの事務所には、ケルベロスがいるんですか?」

「え?うん。そっちにはケロちゃんいないの?」


今度は鈴さんに首を傾げられ、私は頷く。


「何でも前に質屋に出しちゃったとか…」

「そんなにお金ないの?全く…」


そう言った鈴さんはん?と再び首を傾げる。

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