あなたと一緒なら 5

人通りの多い商店街から離れ、薄暗い路地へと連れ込まれた紫乃は口を塞いでいた手が離れたことでげほげほと咳込む。


「…っ、何するの!」

「何って、この状況を見れば察しがつくだろ?お嬢ちゃん」


紫乃を取り囲むように立つ、三人の男。先程のやり方といい、今の言葉といい、おそらく普段からこんなことをしているのだろう。
男達はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる。


「ワゴン車の前にいたのが連れだろ?見るからに大事そうにしてたし…このお嬢ちゃんをダシにして脅せば、たんまり金取れるんじゃないか?」

「少し怪我させた方が、焦らせてもっと金取れるかもな」

「怪我させるのはもったいないだろ。こんなキレイな顔してるんだ…ちょっと遊ばせてもらおうぜ」


三人の内の一人が、紫乃の腕を掴む。不快感を覚え、紫乃が顔を背けた、その時。


「何をしてるの?」


澄んだ声が、澱んだ空気を切り裂くように辺りに響く。その声に男達が振り返り、紫乃もつられてそちらを見た。
通路の先に立っていたのは、一人の女性。薄暗い中でも目立つアイスブルーの髪に、不思議な形の白いコートを纏っている。他の人とは違う雰囲気を纏う彼女は、赤い目をした黒い大型犬を連れていた。
男の一人がその女性に近寄る。


「なんだい、お嬢ちゃん。わざわざお兄さん達と遊びに来たのかな?」

「そんなわけないでしょ。その人の声がしたから、気になって来ただけ」


目を細め、女性は気丈に返す。


「その人から手を離して。嫌がっているでしょう」

「気丈なお嬢ちゃんだな。だけど、その気丈さもいつまで持つかな」


そう言い、男は女性の頬に手を伸ばす。逃げて、と紫乃が言おうとした、次の瞬間。

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