漆黒の闇に踊る 5

「久しぶりね、リアラ」

「レディ、久しぶり!」


来客用のソファに座り紅茶を飲んでいたレディはリアラの姿を認めて軽く手を上げる。


「ごめんね、遅くなって。はい、頼まれた物」

「しょうがないわ、あそこはガードが固かったから。ありがとう」


リアラが腰につけていた鞄から宝石を取り出すと、レディに手渡す。受け取ったレディは宝石を日の光に翳して眺める。


「よくできてるわね、誰もこの中にメモリーカードが入ってるなんて思わないでしょうね」

「そうでしょう?特定の角度からじゃないとメモリーカードが見えないなんて、よくこんな造りにしたものだわ」


レディの言葉に頷き、リアラは宝石を見やる。
実はこの宝石に見える物は模造品(レプリカ)で、中にメモリーカードが入っている。特定の角度から見ないと中のメモリーカードが見えない仕組みになっており、傍目からは宝石にしか見えない。
今回、リアラ達がレディに頼まれた仕事はとある大手企業の持つメモリーカードの入手だった。リアラ達の潜入した会社は表向きは医療機器の開発・販売だが、裏では兵器の開発・販売をしていた。他国やテロ組織への密輸をしており、取引先を突き止めるために顧客の情報が入ったメモリーカードが必要だった。しかし、メモリーカードは何らかの形で隠されているらしく、その場所を突き止めるために少々時間がかかってしまったのだ。


「ま、それぐらい大切な物だったってことね。お疲れさま、報酬は口座に振り込んでおくわ」

「うん、お願いね」

「ええ。また仕事があったら頼むわ。後、何か必要な物があったら言って。いつでも来るから」

「うん、ありがとう、レディ」

「いいのよ。じゃあね、リアラ」


リアラに向かって微笑むと、レディは事務所を後にする。扉が閉まると、男はため息をつく。


「俺らには労いの一言もなしか、それなりに苦労してるってのに」

「あいつが俺達にそんな言葉を言うと思うか?」

「…確かに、そうだな」


二代目の言葉に男は頷く。


「とりあえずみんな集まったことだし、仕事の結果を報告し合うか。地下に行くぞ」

「うん」


頷き、リアラは二代目について二階に続く階段の陰にある扉から地下に向かった。

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