漆黒の闇に踊る 1

「『バイオレット』、そっちの様子はどう?」

『特に異常なし。中はだいぶ混乱してるみたいだけどな』

「むしろ好都合ね。混乱に乗じて目的の物をもらうわ」

『頼もしいね。あ、前方に敵が5人。気をつけろよ』

「了解」


無線から手を離すと、女は目の前に現れた黒服の男に回し蹴りをみまう。太股のホルスターから取り出したトンファーを構えると、呻き声を上げて倒れた男の後ろにいた二人の腹部に勢いをつけてめり込ませる。勢いに押され倒れた二人は後ろにいた二人を巻き込み、床に倒れた。


『お見事』

「どうも」


簡素なお礼をいい、女は廊下を走り抜ける。廊下の先にある大きな扉を開けると、女は目を瞬かせた。


「わあ…」


目の前には先程の男達の仲間であろう、黒服の男達がたくさんいた。ざっと見て30人程か。
銃口を向けてきた男達の動きに素早く反応し、女は柱の影に隠れる。部屋中に銃声が鳴り響き、机の上にあるパソコンや部屋の壁を撃ち抜く。


「『バイオレット』、部屋中敵だらけよ!」

『悪い、その部屋だけ監視カメラにブロックがかかってた!こっちの目的に気づいたみたいだ、人が集まり始めてる!』

「部屋の出入口を全部閉めて!これ以上増えたら、さすがに対処できないわ!」

『わかった!…待て、そっちに誰か向かってる。…『トールン』だ!』

「『トールン』が!?あとどれくらいで着く!?」

『10分てとこか…耐えられるか!?』

「何とか耐えてみせる!」


言うと同時に、女はピンを引き抜き、男達に向かって閃光弾を投げ込んだ。

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