世界を超えて 1

始まりは、町での噂だった。
遠い昔から町近くの山に住み、山を見守ってきたと言われている人の姿に狼の耳と尾を持つ種族―魔狼。
昔から神として崇められてきた魔狼は、その姿を見たという証言がなく、幻の存在とされている。だが、その魔狼について最近、よからぬ噂が流れていた。畑を荒らされただの、家畜の牛や馬が襲われただのという噂から、挙げ句の果てには町の人が襲われたという噂まで。いつの間にか魔狼は神から化け物へと存在を変え、毎日のように町内で魔狼の事が頻繁に噂されるようになった。そしてつい先日、町で魔狼に懸賞金がかけられた。恐ろしい化け物を排除しようという、町の人々の考えからだった。
その噂を聞きつけて、腕に自信のある猟師が町に集まり始めた。かくいう俺も町では一番の腕利きの猟師で、懸賞金と聞いてすぐにその話に乗った。唯一魔狼を殺すことのできるという銀の銃弾を銃に詰め、意気揚々と山へ向かった。
―それが、運命を変える出来事を起こすとも知らずに。

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