幸せのレシピ 1
時計が11時を回った頃、事務所の奥からおいしそうな匂いが漂い始める。それと同時に、楽しそうに鼻歌を歌う声が響く。
「〜♪、〜、〜♪」
声の正体はリアラだ。
リアラは鍋でグツグツと煮込んでいるトマトスープをお玉で小皿に移すと、口に運ぶ。
「うん、おいしい」
笑顔で頷くと、リアラはコンロの火を弱め、鍋に蓋をする。今日の昼食はロールキャベツだ。
サラダを用意しようとリアラが冷蔵庫を開けた時、電話が大きな音を立てて鳴り響いた。すぐ冷蔵庫を閉めると、リアラは電話のある机に向かう。
「DevilMayCry?」
「リアラ、俺だ」
「ダンテさん?どうしたんですか?」
電話をしてきたのはダンテだった。リアラは首を傾げる。
あー…と唸りながら、ダンテは口を開く。
「その…もう飯作っちまってるか?」
「今作ってるところですけれど…どうかしたんですか?」
「その、な、さっき依頼が終わったんだが、依頼人に飯に誘われたんだよ。断ったんたが、しつこく誘われちまって…」
渋々了承したのだとダンテは続ける。
「悪い、せっかく作ってくれてるのに…」
申し訳なさそうに言うダンテに、リアラは首を振る。
「いえ、ダンテさんが悪いわけじゃないですから。帰るの、遅くなりそうですか?」
「ああ、夕方前には帰れると思うが…もし遅いようだったら、飯は先に食っててくれて構わない」
「わかりました。気をつけて帰ってきてくださいね」
「ああ」
電話が切れると受話器を置き、リアラはため息をつく。
「どうしようかな…」
あと30分もすればロールキャベツは出来上がる。それにサラダを追加すればいいだけだから、昼食はすぐに出来上がるのだが、何となく一人で食べるという気が起きなかった。一人で食べるより二人で食べた方がおいしい…そのことを知っているからだ。
「ヨーグルトでも食べようかな…」
多少はお腹に溜まるだろう、そう思い、リアラはキッチンに向かった。
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