ハラハラドキドキプチ旅行! 10

「もう、信じられない…」


受付の近くにある休憩所で椅子に座り、リアラはため息をつく。
あれから、部屋に戻ったリアラとディーヴァは遅れて戻ってきた二人と口を聞かず、夕食も無言で食べ終えた。
ディーヴァはすぐに布団を被ってふて寝を始めてしまい、横で謝る若を放っておいて、リアラは部屋を出てここに来たのだ。


(せっかく、遠いところまで旅行に来たのに、何も楽しくない…)


せっかくみんなで浴衣も選んだのに、とリアラは自分の着ている浴衣を見る。
ディーヴァの選んでくれた薄紫と白の格子模様の浴衣に、自分で選んだ雪の刺繍入りの白い羽織。貴重な体験で顔が綻ぶはずなのに、今の気持ちじゃ笑顔も出ない。
はぁ、とリアラがため息をついた、その時。


「ここにいたのか」

「!」


突然かけられた声に、リアラはびくりと肩を震わせる。大好きな人の声だが、今は振り向きたくなくて、リアラは俯く。
何も言わずに声の主―髭はリアラの隣に腰を下ろすと、ゆっくりと口を開く。


「…悪かったよ。機嫌直してくれ」

「……」


だんまりを決め込むリアラに触れようと髭は手を伸ばすが、リアラにその手を払われる。


「触らないでください」

「リアラ…」

「いつもいつもこんなことして…事務所ならまだしも、こんなところでまでやるなんて…」


そう言い、再び黙ってしまったリアラに、髭は再び手を伸ばす。また払われるのも気にせずに、リアラの腰に手を添えて引き寄せ、もう片方の手で彼女の顎を持ち上げる。見つめた先にある潤んだ瞳にチクリと心が痛んだ。


「リアラ…」

「離してください。いたずらばっかり…こんなの、嫌いです」

「リアラ、頼むから話だけでも聞いてくれないか?」


懇願するように言われ、渋々リアラは髭と目線を合わせる。彼女の頬を撫でながら、髭は口を開く。

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