ハラハラドキドキプチ旅行! 9
ガサッ
「!」
「え…」
突然聞こえた物音に、二人の動きが止まる。ビクビクしだすディーヴァをよそに、リアラは注意深く気配を探ると、ある一点を見据えて右手をかざした。
「そこっ!」
リアラがかざした手から生み出された氷柱が庭の低い木に向かって飛んでいく。すると。
「ぐえっ!!」
低く呻き声が響き、何かが倒れる音が響く。
湯から上がり、タオルで前を隠すと、リアラは躊躇いもなく音のした方へ足を向ける。
「やっぱり…」
「リアラ…!」
木の影に隠れていたのは若だった。リアラに気づいた若が倒れたまま見上げるが、リアラの怒気にそのままびしりと固まる。
「こんなところでも覗こうなんて、いい度胸ね…」
「ち、ちょっと待っ…!」
若が言い終わる前に、リアラの生み出した無数の氷柱が若に降り注ぎ、若は血塗れになって倒れる。
キッと柵の向こうを睨み、リアラは低い声で言う。
「ダンテさん、いますよね…?」
途端、柵の向こうでバシャリと水の跳ねる音が響き、少しの間を置いて聞き慣れた声が届く。
「あ、ああ…」
「他に、お客さんいます?」
「い、いや、俺と若だけだ」
「…そうですか、なら、遠慮はいらないですね」
その言葉の意味に気づき、髭が口を開くも遅く、リアラが手をついた柵からビシビシと音を立てて男湯が凍りつき、髭もろとも凍り漬けにしてしまった。
「ずっとそうしてろ、バカ」
冷たく言い放つと、リアラはディーヴァを連れて露天風呂を後にしてしまった。
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