ハラハラドキドキプチ旅行! 3
四人が中に入ると、旅館のオーナーである夫婦が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。ようこそ」
出迎えの挨拶をすると、夫婦は丁寧に館内の仕組みを説明してくれた。夫婦揃って着物を着ており、とてもよく似合っていた。
「お二人で着物着ていらっしゃるんですね。すてきです」
「ふふ、ありがとうございます」
「『キモノ』?」
「うん、日本の伝統的な服のことだよ。実際見たのは初めてだけど」
「へぇ…。でも着るの大変そう」
「そうですね、着物は着るのに時間がかかるし、少し手間もかかりますね。でも浴衣なら、初心者の方でも簡単に着れますよ」
「『ユカタ』?ユカタって何ですか?」
「日本では夏のお祭りの時に着る物で、着物の簡易版と考えて頂ければいいですよ。寝間着代わりにもなっていて、日本の旅館にはよく置いてあります」
ここでは様々な浴衣を用意しているので、よかったら着てみてください、と言い、女将がディーヴァ達の後ろを指し示す。それにつられてディーヴァ達が後ろを見やると、浴衣のコーナーがあって様々な浴衣が並べられていた。
「わ、すごい…!」
「きれーい!いろいろあって目移りしちゃう!」
かわいい物に目がない二人は楽しそうに浴衣を眺めている。
「ディーヴァちゃん、あれ似合いそうだね」
「え、どれどれ?…わ、かわいいー!」
キャッキャとはしゃぐ二人だが、ディーヴァがあることに気づいた。
「あ、有料…」
ふと視線に入った看板には『こちらの浴衣は有料です』と書かれており、二人は顔を見合わせる。
「有料かあ…着たいけど…」
「うん…せっかくお金かけないできてるのに、ここでお金かけちゃってもね…」
がっかりしながら、二人がため息をついたその時。
「着たらいいじゃないか」
「…え?」
二人が顔を上げると、いつの間にか後ろに髭と若がいた。
「髭の言う通りだ、着たいなら着ろよ」
「でも、お金…」
「それならオレらが払う。だろ?」
「ああ」
「…いいんですか?」
「せっかく来たんだ、滅多にない機会だから着たらいい。それに、宿代が浮いた分、こっちに使えるって考えたらいいだろ」
「ダンテさん…」
リアラとディーヴァは顔を見合わせ、嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます、ダンテさん」
「ありがと、ダンテ!」
恋人の笑顔に、髭と若は優しい笑みを返す。
「ね、せっかくだからみんなで浴衣着ようよ!で、二人のはあたし達で選んであげよう!あたしがダンテ、リアラお姉ちゃんが髭さんのを選ぶの!」
「えっと、あまりセンスよくないと思うけど…がんばる」
「リアラが選んでくれた物なら何でも着るさ」
「オレも、ディーヴァが選んだ物なら何でもいいぜ!」
「じゃあ、さっそく選びますか!」
「うん!」
さっそくそれぞれの恋人を連れて、ディーヴァとリアラは浴衣を選び始めた。
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