Shall we dance? 1
日も暮れてきた頃、ティナは事務所への帰り道を歩いていた。手には買い物袋を提げている。
「遅くなっちゃったなあ…。早く帰らないと!」
昼下がり、ネロに夕飯の買い出しを頼まれて市場に行ってきたのだが、よくお世話になっている野菜売りのおばさんとの話についつい夢中になってしまい、慌てて残りの材料を買っていたら、もうこんな時間になっていた。
「もうすぐで二人共帰ってくるだろうし、急がなきゃ!」
昼過ぎ、依頼に出かけて行ったダンテとリアラの顔が頭に浮かぶ。
リアラは今フォルトゥナから遊びに来て事務所に滞在しているのだが、今日はダンテに誘われて一緒に依頼に行っている。ダンテは時々無茶なことをするので心配になったりするのだが、リアラが一緒なら無茶はしないだろう。
そんなことを考えながら、帰りを急いでいたその時。
「…ん?」
何かに気づき、ティナは足を止める。
何か、こっちに向かってきているような…。
そう思った次の瞬間、すぐ側の建物から黒い霧のような物が吹き出した。
「!」
身の危険を感じ、ティナはコートのポケットから愛銃のテディを取り出す。
黒い霧の正体は、メフィストだった。黒いマントを揺らめかせ、ティナの様子を窺っている。
(運悪い…。悪魔に会うなんて…)
そう思えど、頼れる人はいない。ティナも銃を構えながら相手の様子を窺う。
その時、後ろから大きな影が伸びた。はっとしてティナが後ろを振り返った時にはもう一体いたメフィストが自分に向かって鋭い爪を伸ばしていた。前にいたメフィストもティナの隙をつき、鋭い爪を伸ばす。
(やば、避けられない…!)
最悪の事態が頭をよぎり、ティナが思わず目を瞑ったその時。
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