伝わる優しさ 4
公園に入った二人は、遊歩道の近くにあったベンチに腰を下ろした。夕方に差しかかっているためか、人はまばらだ。
遊歩道を挟むように立つ紅葉やイチョウが夕焼けにより赤く染まり、とてもきれいだった。
「きれい…」
「そうだな」
しばらくその景色を眺める二人。一言も発することはないが、むしろそれが心地好かった。
静寂が二人を包む中、寒さゆえかダンテがくしゃみをした。
「っくし!」
「大丈夫ですか?ダンテさん」
「ああ…ちょっと冷えてきたかもな」
そう言って身体を擦るダンテを見て、リアラはあることを思い出す。
「ちょっと待っててくださいね」
リアラは持っていた鞄から何かを取り出し、ダンテの方へと向き直る。
「ダンテさん、ちょっとこっち向いてくれますか?」
「ん?」
首を傾げてダンテがリアラの方に身体を向けると、ふわりと何かが首に巻かれた。形を整えると、リアラは微笑む。
「はい、これで大丈夫です」
リアラの言葉につられてダンテが視線を下に向けると、赤い物が見えた。肌触りから察するに、どうやら毛糸のマフラーのようだ。
「…これ、リアラが編んだのか?」
事務所にはマフラーなんてないし、ここ最近買った記憶もない。
ダンテの問いにリアラは頷く。
「はい。最近、ダンテさんが寒いって言うからこのままじゃ外に出なくなると思って。一週間前から編んでたんです」
どうやらいつも「寒い寒い」と呟いていたことを気にしてくれていたらしい。寒いからと言って全く外に出なくなるなんてことはないが、本気で心配してくれた彼女にダンテは苦笑する。
「悪い、ありがとな」
リアラの頭を撫でてやると、彼女は目を細めて照れくさそうに笑う。
「本当に器用だよな」
赤いマフラーを持ち上げながら、ダンテは感心する。リアラの性格が現れているのか、マフラーは編み目が真っ直ぐで、大きさまできれいに揃っている。
昔、母親から編み物を教わったことがあると以前聞いたことがあったが、まさか手編みの物を本当にもらうとは思わなかった。
「そうでもないですよ。久しぶりにやったので、少し時間がかかっちゃいましたし」
「いや、十分だ。ありがたく使わせてもらう」
「本当ですか?よかった…」
安堵の笑みを浮かべると、リアラは続ける。
「マフラー、少し長めにしてみたんです。おしゃれだし、ダンテさんに似合うと思って」
「そうか。色々と考えて作ってくれたんだな。ありがとな」
「いえ、ダンテさんが喜んでくれるならそれでいいんです」
手を組みながら嬉しそうに笑うリアラに、ダンテも思わず笑みが溢れる。
ふと、何かを思いついたのか、ダンテはリアラに話しかけた。
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