幼なじみ振り向かせ大作戦! 7
「…遅かったみたいね」
「トリッシュ…!」
姿を現したのはトリッシュだった。彼女はダンテの様子を見て理解したようで、深くため息をつく。
ダンテは階段からかけ下り、トリッシュに詰め寄る。
「遅かったってどういうことだ!お前、何か知ってるのか!?」
「落ち着きなさい。ちゃんと説明するから、そこに座って」
事務所のソファを指差すと、トリッシュは自分からソファに近寄り、腰かける。ダンテも向かいのソファに座り、話を切り出した。
「で、どういうことなんだ?」
「あなた、本当にわからないの?」
「何がだよ」
ムスッとした顔で返すダンテに、トリッシュは再びため息をつく。
「あなた、昨日私が『アリスのこと、何とも思ってないの?』って聞いた時、何て返したか覚えてる?」
「は?それがアリスがいなくなったことに何の関係があるんだよ?」
「いいから。答えなさい」
トリッシュの迫力に押され、仕方なく昨日のことを思い出しながらダンテは答える。
「確か…『あいつはただの『妹』で、恋愛感情はない』だったか」
「あと、『住むところが見つかるまで置いてるだけだ。住むところが見つかったら出ていくだろ』ね」
脚を組み直し、トリッシュは続ける。
「それ、あの子には聞こえなかったと思ってるでしょ。運悪く、あの子聞いてたのよ」
「何…?」
「あの子の顔をちゃんと見た?信じられないって顔してたわよ、あの子」
タイミング悪かったわ…と溢すトリッシュに、ダンテはいぶかしげな顔をする。
「タイミング?どういうことだ」
「あの子には聞かせるつもりなかったのよ。こっそり、あなたの気持ちを確かめようと思って」
「気持ち?」
首を傾げるダンテを見つめ、トリッシュは問う。
「あなた、アリスがここに来た理由知ってる?」
「『仕事を探してここに来た』って言ってたが」
「やっぱり知らないのね…。まあ、無理もないかしら」
「違うのか?」
「ええ。前に教えてもらったわ。…『ダンテに会いたかった』って」
「!」
ダンテは目を見開く。
「聞いたら、照れつつも話してくれてね。小さい頃は『友達』としか思ってなかったけど、あなたがいなくなってから悲しかった、って。それで、その時初めて気づいたって言ってたわ。あなたが好きだってことに」
「……」
「20歳になって、あなたを探すために町を飛び出したって言ってたわ。大したものよね、今まで町から出たことなんてなかったのに」
そう言うと、トリッシュは再び問う。
「…で、どうするの?」
「どうする、って…」
「このまま放っておくの?あの子、行っちゃうわよ」
立ち上がり、ダンテを睨みつけると、トリッシュは続ける。
「何も思わないのなら、そのままにしておけばいいわ。ただ、少しでも何か思うのなら…さっさと追っかけなさい」
「トリッシュ…」
口を引き結ぶと、何かを決心したのか、ダンテは立ち上がった。
「…悪い、留守番頼む」
「いいからさっさと行きなさい、行っちゃうわよ」
追い出すように手を振るトリッシュを視界の隅に捉えながら、ダンテはベストを着て、コートを掴むと勢いよく事務所の扉を開ける。
バタン!
大きな音を立てて閉まった扉を見つめながら、やれやれとトリッシュはため息をついた。
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