コラボ小説 | ナノ
 おまけ

次の日、放課後の保健室。
委員の仕事で包帯や絆創膏の入った棚を整理していたリアラに、髭が呼びかけた。


「…リアラ」

「?はい」


呼ばれ、リアラは振り返る。


「お前、あの事件を防ぐために時々二代目にお菓子作る約束したって?」

「ああ、はい」


髭に確認され、リアラは頷く。
あの事件の後、申し訳なさそうに自分と紅に謝ってきた二代目に、リアラはある提案をした。


「今度、二代目があの状態になりそうな時は私に言ってください。私、お菓子作って持ってきますから」


またあんな状態になられても困るし、二代目もあの姿を見せるのは本意ではないだろう。それならば、事前に防げばいいのだ。
リアラの提案に二代目は目を瞬かせたが、「そうさせてもらう」と頷いてくれた。そして、「早速だが、明日作って来てくれ」と言われ、まだいけるのかと驚きと呆れが混じりつつも、今日の昼に作ったお菓子を渡して来たのだ。
ちなみに、今日渡したのはマドレーヌ。急だったため、あまり時間のかからないものにした。
せっかくだから、とみんなの分も作り、目の前の髭―恋人にも渡したはずだが。


「…おいしくなかったですか?」


他のみんなは、「おいしい」と言ってくれたのだが。
落ち込むリアラを見て、髭は唸る。


「あー…そうじゃなくてな…」


困ったように頭をガシガシと掻き、髭はぽつりと呟いた。


「…他の奴等がお前の作った菓子食べて喜ぶの、嫌なんだよ」

「…へ?」


思いもしなかった言葉に、リアラは目を瞬かせる。
それは、つまり…。


「…嫉妬してるんですか?」


リアラが言うと、図星らしく、唸りながら髭は俯いてしまった。


「…ガキくさいと思うか?」


自分をちらりと見上げて尋ねた髭に、リアラはくすりと笑みを溢しながら返す。


「いいえ。むしろ、嬉しいです」


自分のことを好きだから、こうやって嫉妬してくれる。子供っぽいところを見せてくれる。
かわいい人だな、と思いながら、リアラはゆっくりと口を開いた。


「…この後」

「ん?」

「仕事終わった後、買い物につきあってくれるなら、お菓子作ります」


リアラの言葉に髭は目を瞬かせたが、やがてニヤリと口角を上げた。


「…それは、俺の家で、ってことか?」

「…寮の門限に間に合う範囲内なら」

「決まりだな」


じゃあストサンで、と言う髭にまたですか、と返すリアラ。
保健室に、甘く、穏やかな空気が流れた。