▼ ‐闇に咲く花‐ 4
所変わり、国内で一番大きな建物―軍の施設内。
広く真っ白な廊下をブーツの音を響かせて歩く一人の女性。そこへ、一人の男性が話しかけてきた。
「リアラ!」
呼ばれた女性は足を止め、振り返る。アイスブルーの髪がふわりと揺れる。
「少尉、どうしたんですか?」
女性が話しかけると、男性は不服そうに眉を寄せる。
「二人っきりの時は名前で呼べって言ってるだろ」
「…あのね、ここは軍なのよ?誰かに聞かれたらどうするの」
はぁ、とため息をつくと、女性は男性を見つめる。
女性の名はリアラ。階級は准尉。男性の名はダンテ。階級は少尉。
本来ならこんな風に砕けた口調で話すことなどできないのだが、昔からの友人のため、二人っきりの時はこうして話している。
「いいじゃん、誰もいねーし」
「ダンテは声が大きいからだめ。遠くまで響くもの」
「ちえっ」
「…で、何の用?」
リアラが尋ねると、ダンテは待ってました、と言わんばかりに話し出す。
「リアラ、明日仕事休みだろ?部屋に遊びに行ってもいいかなーって」
「いいけど…なるべく他の人に見つからないようにしてね」
「わかってる」
ダンテが頷いたその時、廊下の向こう側から見慣れた影が来るのが見えて、リアラは声をあげる。