コラボ小説 | ナノ
 ‐闇に咲く花‐ 3

「久しぶり、ネーヴェ。元気にしてた?」

「トリッシュ!」


店にやってきたのはトリッシュだった。気づいたネーヴェはトリッシュに駆け寄る。


「本当に久しぶりね…!何ヶ月ぶり?」

「ざっと三ヶ月ぶりかしら。元気そうで何よりだわ」

「トリッシュも元気そうでよかった。よかったら入って、今、お茶を淹れるわ」

「ありがとう」


ネーヴェはトリッシュを奥へ招き入れると、台所で二人分の温かい紅茶を淹れて戻ってくる。


「はい、どうぞ」

「ありがとう」


礼を言ってカップに口をつけたトリッシュを見て、ネーヴェは口を開く。


「状況はどう?」

「相変わらずね。前と同じ状況を維持しているところもあれば、激戦化しているところもあったわ。穏やかに過ごせるところなんて、どこにもない」

「そう…」


悲しそうな顔をするネーヴェに、トリッシュは苦笑する。


「このご時世だもの、どこもかしこも戦争だらけよ。ここは比較的平和な方でしょう?」

「…そうね。ごめんなさいトリッシュ、困らせちゃって」

「いいのよ。あなたのそういうところが私は好きだわ」


にっこりと笑ってそう言うと、トリッシュは再びカップに口をつける。


「またすぐに行ってしまうの?」

「そうね。上に報告してからだけど…一週間したらここを出ると思うわ」

「じゃあ、いる内にまた遊びに来て。今度はお菓子を作っておくから」

「嬉しいわ、ありがとう」


しばらくの間二人で話していると、ふいにトリッシュが真面目な顔になった。


「…ネーヴェ、服の制作を頼みたいんだけど」

「…わかった。どんなの?」


空気が変わったのを感じ取り、ネーヴェも真剣な顔をして尋ねる。少しためらった後、トリッシュは言った。


「『紫の手袋』をお願い」

「!」


ネーヴェは目を見開いた後、す、と目を細めて答える。


「…わかった。いつまでに作ればいい?」

「特に期限はないけれど…近い内でいいわ」

「わかった」


ネーヴェが頷くと、トリッシュは立ち上がる。


「そろそろおいとまするわ。またね、ネーヴェ」

「ええ、またね、トリッシュ」


トリッシュを見送ったネーヴェは扉の閉まる音が響くと同時に俯く。そして、手のひらを握りしめる。


「また、やる気なのね…」


ネーヴェの呟きに、ケルベロスは心配そうにクゥン、と鳴いた。