▼ ‐闇に咲く花‐ 2
街の隅にひっそりと建つ、服屋『snow forest』。あらゆる服の制作や修繕を行うこの店は、街の住人に親しまれていた。
「では、お預かりしますね」
「悪いねネーヴェちゃん、頼むね」
「気になさらないでください。じゃあ、明日またお店に来てください」
「わかったよ。じゃあね、ネーヴェちゃん」
「はい、また明日」
黒髪の女性は微笑みながら客の男性に手を振ると、預かったばかりの服を奥の工房にある依頼用の棚に入れる。
ネーヴェ―この店の女主人である。
「今日は5件か…あと2、3件来るとしても、今日中に終わらせられるかな」
すでに簡単なものはいくつか終わらせている。もう一つやっておこうかと考えたネーヴェの足元に、黒い犬がやってきた。それに気づいたネーヴェは黒い犬に微笑みかける。
「どうしたの?ケルベロス」
ネーヴェが頭を撫でてやると、黒い犬―ケルベロスは目を細めて気持ちよさそうにクゥン、と鳴く。
「心配してくれてるの?大丈夫、無理はしないから」
安心させるように微笑むと、ケルベロスはわかった、とでも言うようにワンッ!と鳴く。
その時、店の扉が開いた。