▼ その後 3
(リアラを物に例えるなら、か…)
こちらの世界に戻ってきた日、朝食を食べ終え、リアラとディーヴァがお茶の準備をしていた時にあちらの世界の自分が尋ねてきた。
『リアラはさ、オッサンのこと『月』だって言ってたんだ。なあなあ、オッサンはリアラを物に例えるなら、何なんだ?』
その時の答えを思い出し、ダンテはポツリと呟く。
「…雪」
真っ白で、汚れを知らない、真っ直ぐなところが。彼女の持つ能力(ちから)と同じだと、そう思った。
もう人生も、中盤に入っている。自分は残した者も、やり残したことも少ない。だから、こちらの世界に帰れないかもしれないと思った時、未練など、ほとんどなかった。
…けれど。
(リアラだけは、手離せないと思ったんだ)
自分のことを『家族』だと言ってくれて、過去に傷ついた自分を救ってくれた彼女。今では自分の『帰る場所』になっている彼女を、手離すことはできなかった。
「…必ず、守る」
今までたくさん傷ついてきた彼女。その分、これからは笑顔でいてほしい。隣で、笑っていてほしい。
そう願い、ダンテはリアラの元に歩み寄ったのだった。