コラボ小説 | ナノ
 5日目 32

「しっかし、いろいろあったなぁ…こんなことになるとは思わなかった」

「私もです。けれど、ディーヴァちゃんとダンテに会えてよかった…そう思います」

「そうだな、俺もそう思うよ」


夜、事務所の屋根でリアラと髭は夜空を見上げながら話をしていた。こうやって間近で話すのは久しぶりで、身近に感じる体温が、お互いに安心感を与える。
…とはいえ、今の二人の距離は、かなり近い。髭が自分の両足の間にリアラを座らせて、後ろから抱きしめているからだ。リアラとしてはとても恥ずかしいのだが、久しぶりに触れる温かさに安心しているのも事実で、たまには甘えてもいいか、と珍しくそんな気持ちになっていた。
夜空を見上げていたリアラが、ふいに何かを口ずさみはじめた。


「…Ave Maria, gratia plena,
Dominus tecum,benedicta tu in mulieribus,et benedictus fructus ventris tui Jesus…」


聴いたことのあるその曲に、髭が尋ねる。


「『アヴェ・マリア』か?」

「ええ。何となく、ですけど」


クラシックやロックなど、ジャンル問わず何でも聴くリアラは、いろんな曲を知っている。歌うのは母親から教わった子守唄が多いが、たまにこうして違う曲も歌っていた。
とはいえ、悪魔の血をひく自分が讃美歌を歌うなんて、天使の血をひくディーヴァにあったからかもしれない。
そう、リアラが思った時だった。