コラボ小説 | ナノ
 5日目 31

「二人共、どうしたの?そんな難しそうな顔して…」


奥の風呂場から、ディーヴァが顔を出した。後ろにはリアラもいる。


「ああ、ちょっとこの鏡をどうするか話し合っててな。リアラ、喉の状態はどうだ?治ったか?」

「はい、もう大丈夫です。声も掠れてないですし」

「そうか、よかった」


そう言うと、髭は傍に来たリアラの頭をゆっくりと撫でる。


「まあ、ちょうどいい。全員に関係のあることだ、二人もそのまま話を聞いてくれ」

「わかりました」

「うん、わかった」


リアラとディーヴァが頷くのを確認して、髭は話し始めた。


「この鏡なんだがな…持ち主であるあの悪魔が死んでから、徐々に魔力が失われつつある。持って、あと一日くらいだろう」

「一日…っていうことは…」

「ああ…俺とリアラは、明日には元の世界に帰らなきゃならない」


突然すぎる知らせに、三人は目を見開く。


「え…二人とも、明日には元の世界に帰っちゃうの?」

「急だな…」

「これでも持ってる方だろ。この鏡から魔力が失われたら、俺達は帰れなくなる。…急とはいえ、仕方ない」

「そう、ですね…」


ぎこちなく頷き、リアラは俯く。
元の世界に帰れる。嬉しいはずなのに、こんなに寂しく感じるのはなぜだろう。
そんなリアラの心情を察しているのか、彼女の頭を撫でながら、髭は続ける。


「とはいえ、この鏡をそのままにしてはおけないからな、俺達が帰った後に若に壊してもらうことにした」

「壊す…んですか?」

「さすがに置いたままにしてはおけねーしな。万が一何か起こって、ディーヴァを危険な目に合わせるわけにはいかねーし」

「そっか…。そうだよね」


若の言葉に、リアラが頷いた時だった。


「ダンテ、待って!お願いだから、その鏡を壊さないでほしいの!」


突然ディーヴァが若の腕を掴み、必死に訴え始めた。若のみならず、リアラと髭も驚きに目を見開く。


「ディーヴァちゃん…?」

「いきなりどうしたんだよ、ディーヴァ。お前、この鏡あるの怖がってただろ?」

「それはそうだけど…。どんな物であれ、リアラお姉ちゃんに会えたのは、この鏡がきっかけになったから、思い出に取っておきたいの。もう、会えなくなっちゃうかもしれないから…」

「ディーヴァちゃん…」


ディーヴァの言葉に心を打たれたリアラは、自らも若と髭に頼みこんだ。


「私からもお願い。ディーヴァちゃんを危険な目に合わせたくないダンテの気持ちは私にもよくわかるし、その鏡を管理しておくのは大変だっていうこともわかってる。けれど、ディーヴァちゃんがそう言ってくれるなら、私もそうしたい」

「リアラ…」

「……」


頭を下げて頼みこむリアラに、髭は小さくため息をつくと、リアラの頭にポン、と手を置いた。


「…はぁ。仕方ねえな」

「二人がそう言うんだもんな、取っといてやるか」


若もディーヴァの頭に手を置き、優しく撫でてやる。
ディーヴァとリアラは顔を見合わせると、嬉しそうに笑った。


「ありがとう、ダンテ!」

「ありがとうございます、ダンテさん!」


二人の笑顔に、若と髭もつられて笑みを浮かべた。