▼ 5日目 24
「な、大丈夫だったろ?」
「あ、ああ…。あいつ、結界を張ることもできるんだな」
「魔力のコントロールなら、俺以上の腕前だ。それに、あいつだって俺らと同じデビルハンターだ、悪魔との戦いは数え切れないほどしてきてる、だろ?」
「ああ」
「ディーヴァが心配なのはわかるが、彼女のことはリアラに任せて、俺らは少しでも早くあの悪魔を倒す、それが今一番やるべきことだろう?」
「ああ…そうだな」
頷き、若はリベリオンを構えると大きく跳躍する。次いで髭も地を蹴り、悪魔に向かってリベリオンを振り下ろした。
『くっ…!』
目の前に気を取られていたセラータは、急いで鏡の中へと戻る。しかし、逃げるのが遅かったのか脇腹と右腕に切り傷を負ってしまった。
それに加えて鏡の移動は魔力を使う。重なる移動に魔力を消費し、段々と勢いがなくなっていく。
「おいおい、もう終わりか?」
『っ…!』
若の言葉にセラータは唇を噛みしめると、鏡から姿を現した。左右にはあの鏡が浮かんでいる。
両手を広げ、セラータは地を這うような声で言う。
『舐めるんじゃないわよ…!』
その言葉と同時に彼女の足元の影が勢いよく広がっていく。嫌な予感がしたリアラが若と髭に向かって叫ぶ。
「二人共、飛んで!」
「「!」」
リアラの言葉に素早く反応し、若と髭は大きく跳躍する。次の瞬間には二人のいた場所にまで影が広がり、おびただしい数の針が地面を覆い尽くした。
「っ!」
「チッ!」
針は空中にいた二人の元まで伸び、髭は左足に、若は脇腹に傷を負う。だが、それを忘れさせるような、絶叫が辺りに響き渡った。
「あああああっ!!!」
その場にいた皆が、声のした方へと視線を向ける。皆の視線の先には、セラータに協力していたあの男が針で串刺しになっていた。
「なっ…!」
「ひっ…!」
「ディーヴァちゃん、見ちゃだめ!」
「……」
絶句する若に、引きつった声を上げるディーヴァの視線を遮るように抱きしめるリアラ。髭だけは、無言でその光景を見ている。
全身から血を流しながら、痛む身体を引き摺り、男はセラータに手を伸ばす。