▼ 5日目 20
『っ、馬鹿な、どうしてあの鏡を使える!?他の奴には使えないのに…!』
「んなもん知るか。ただ、リアラに呼ばれた気がしたから、鏡を見たらここが映ってた、それで手を伸ばしたらこっちに来れた…それだけだ」
「ダンテさん、身体は、身体は大丈夫なんですか…?」
自分がこちらの世界へ来た時は時空を超えた影響か、魔獣化したまましばらく戻れなかった。彼の身体にも、何かしら異常が起こっているのでは…。
掠れた声で心配そうに自分を見上げるリアラに、髭は安心させるように微笑む。
「何もおかしなところはないから、心配するな」
その様子を見ていたセラータは、呆然としたまま呟く。
『まさか、自分の魔力を使ってここまで来たっていうの…?ありえない、私ならまだしも、他の奴等なら膨大な魔力を消費して、立ってすらいられないのに…!』
「だから知らねえって。それに、そんなに魔力も使ってねえしな」
『使ってない、ですって…?…!まさか…!』
はっとし、セラータは鏡を見やる。集中してよく見てみると、鏡からかすかに自分とは別の魔力を感じる。
苦々しげに、セラータは口を開く。
『…そういうことか…。そこの女がこの鏡をこっちに持ってくるまでに、少しだけど鏡に魔力が移った。それがこっちへの道標になったのね…。さらに、その魔力を移した本人が近くにいるんだもの、道は確かなものになる。だからそれほど魔力を使わずに来れたのか…』
セラータの言葉に、リアラと髭は顔を見合わせる。
「詳しくはわからねえが…要するに、リアラのおかげ、ってことか」
「え、えーっと…?」
戸惑いながら首を傾げるリアラ。
二人の様子を見ていた若は呆れたように口を開く。
「二人共、考えるのは後にしてくれねえか?」
「おお、悪い悪い。さっさと終わらせるか」
『舐めないでほしいものね…。今の私は鏡が二つ揃ってる、前のようにはいかないわよ?』
「ほぉ、それは楽しみだな」
ニヤリと髭は笑みを浮かべる。まるで、この状況を楽しんでいるかのように。隣に立つ若も好奇心に満ちた笑みを浮かべていて、世界は違えど同じ『ダンテ』なのだと思わされる。
リアラとディーヴァは顔を見合わせ、呆れたようにため息をついたのだった。