▼ 5日目 19
「…その手を離しな、じゃねえと怪我するぜ?」
「『っ!!?』」
突然聞こえた声に、二人は声のした方を振り返る。
二人の視線の先には、空中に浮いた銀縁の鏡。鏡の表面が大きく波打ち、そこから腕が現れたかと思うと、次の瞬間には赤い影が空中を駆けた。
「…っ!」
身の危険を感じ、男はその場から飛び退く。次の瞬間には空気を切り裂く音が響き、リアラの喉を貫いていた棘が切り離されていた。
倒れそうになるリアラの身体を、温かな何かが支え、抱え上げる。ぼんやりとした視界に映る影が、口を開いた。
「リアラ」
「ダン、テ、さん…?」
聞き慣れた、けれど久しく近くで聞いていなかった声。背中に感じる、優しい温かさ。
わかった途端、リアラの目から涙が溢れ出す。
「…っ、ダンテ、さ…!」
「ああ、無理にしゃべるな、まだ喉が治ってないだろ。…待たせて悪かったな」
頬に伝う涙を親指で拭ってやると、ダンテはリアラの額にキスをする。
「…っ!」
「すぐ終わるから、ちょっと待っててくれ」
そう言って捕まっているディーヴァに視線を移したダンテは、少しの間を開けて呟いた。
「…どうやら、そっちも騎士(ナイト)が来たみたいだな」
ダンテが言い終わるのと同時に空気を切り裂く音が響き、ディーヴァを拘束していた触手がバラバラになって地面へ落ちて消える。倒れかけたディーヴァの身体を、温かな腕が抱え上げた。
「ディーヴァ、無事か!?」
「ダンテ!」
現れたのは、もう一人のダンテだった。恐怖からようやく解放されたディーヴァはダンテに抱きつく。
「…っ、怖かった…っ」
「遅くなってごめんな、もう大丈夫だからな」
そう言ってディーヴァの頬にキスをすると、ダンテはセラータ達から距離を取る。そして、もう一人の自分の隣に立つと、そちらへと視線を向けた。
「よう、オッサン」
「よう、若い『俺』。感動の出会い、ってとこか?」
「かもな。話したいことはいろいろあるけど…」
「まずは仕事、だな」
頷き、二人のダンテは目の前の敵に視線を向ける。うろたえたセラータが叫ぶ。