▼ 5日目 16
「…来たみたいだね」
男の言葉に、ディーヴァが前を向くと、遠くに見慣れたアイスブルーが見えた。
ディーヴァは思わず叫ぶ。
「リアラお姉ちゃん!」
「!ディーヴァちゃん…!」
リアラはディーヴァに気づくと、駆け足で距離を縮める。そして、すこしだけ離れた位置で立ち止まる。
『やっと来たわね』
「やっぱりあんたか…。そこの男に、協力してもらってたのね?」
『宝石にした魂を渡してね。代わりに、彼の店に来るきれいな女をおびき寄せてもらってるの。彼の連れてくる女はみんな美しくてね、どれもおいしかったわぁ…』
そう言って恍惚とした表情を浮かべる悪魔。
「最低ね、あんたも、そこの男も」
『どうとでも言いなさい。それより、あの鏡は持ってきたの?』
悪魔の言葉に、リアラは脇に抱えていた物を地面に置く。包んでいた布を取り払うと、銀縁の鏡が姿を現した。
『それを渡しなさい』
「ディーヴァちゃんを解放するのが先よ」
『そんなことを言ってもいいの?こっちは、この子を殺すこともできるのよ?』
そう言うと、悪魔は手を軽く振り上げる。それと同時にディーヴァを縛りつける触手がゆっくりと締まり、ディーヴァが呻く。
「う…苦し…」
「ディーヴァちゃん…!」
苦しむディーヴァの姿にリアラはギリッ、と歯ぎしりすると、小さく呟く。
「…わかったわ、先に鏡を渡す。だからディーヴァちゃんを離して」
『いい子ね』
悪魔は微笑むと、男に鏡を取りに行くように言う。男は頷くと、リアラに近づく。
「わざわざすまないね」
リアラから鏡を受け取ると、男は悪魔の元に戻り、鏡を手渡す。
悪魔は恍惚とした表情で鏡を撫でる。
『ああ、やっと二つ揃ったわ…。力が溢れてくる…』
「…もういいでしょう、ディーヴァちゃんを離して」
『いいわよ、ほら』
リアラの言葉に素直に従い、悪魔は手を振り上げる。すると、ディーヴァを拘束していた黒い触手が消え、ようやくディーヴァは地に足を下ろす。
「リアラお姉ちゃん!」
「ディーヴァちゃん!」
自分に向かって走り寄るディーヴァに触れようと、リアラが手を伸ばした、その時。