▼ 5日目 14
「…ったく、とんだ無駄足だったな」
大きなため息をつき、ダンテは帰り道を歩く。
依頼人から話を聞いて依頼場所である森へと行ったが、悪魔が大量発生しているどころか気配すら感じられず、とんだ無駄足をくってしまった。
(久しぶりに稼げると思ったんだけどな…)
最近、悪魔関連の依頼がなかったため、ようやく収入が得られると思ったのに。
(…仕方ない、また次の依頼が来るのを待つか)
そう思いながら、ダンテは事務所の扉を開けた。
「ただいまー」
中へと声をかけるが、返事は返ってこない。ダンテは首を傾げる。
「リアラ?」
リビングを見回すが、リアラの姿は見当たらない。キッチンの入口近くには掃除をしていたのであろう、バケツが置かれたままになっている。
「どこ行ったんだ…?」
もう一度辺りを見回していたダンテは、窓ガラスの一つが割れていることに気づいた。そして、床にはグシャグシャに丸められた紙。
「何だ、コレ?」
窓に近づき、ダンテは紙を拾い上げ、広げる。そこには文字が書いてあり、ダンテはその文字を目で追う。
『氷の半魔さんへ
君達の大事な子を連れていかせてもらったよ。返してほしかったら、銀の鏡と交換だ。ただし、一人で来ること。待ってるよ。』
「なっ…!」
ダンテは目を見開く。君達の、ということは当てはまる人物は一人しかいない。そして、銀の鏡といったら…。
ダンテは慌てて辺りを見回す。リビングに置かれていたはずのあの鏡が見当たらない。
「協力してる奴がいたってことか…!」
そう呟いたダンテは、ふとあることに気がつく。
自分が依頼でいない時にこんなことがあるなんて、あまりにもタイミングがよすぎる。それに、わざわざ紙には『氷の半魔』宛てで書いてあった。
まさか…。
「…っ、最初から仕組んでたってことかよ…!」
ディーヴァを連れ去ることも、自分を依頼に行かせてここから離すことも、その間にリアラを呼び出すことも。
グシャリと紙を握り潰し、ダンテは急いで事務所を出る。
(ディーヴァ…リアラ…!)
二人が無事であることを強く祈りながら、ダンテは紙に書かれていた場所を目指し走った。