▼ 5日目 9
「…でも、ダンテさんは気づいてくれるの。言わなくても、言えなくても、すぐに気づいてくれる」
上手く伝えられないのに、戸惑って伝えられないのに、あの人は理解してくれる。まるで、言わなくてもわかっているよ、というように。
だから、隣にいてすごく安心するのだ。あったかくて、優しくて、心地よい。
そこまで考えて、リアラははっと我に返る。
「あ、ご、ごめん…!話逸れちゃって…!」
「いや、いいよ。…本当に大切なんだな、オッサンのこと」
「…うん」
ダンテの言葉に、微笑みながらリアラは頷く。
ふいに身を乗り出して、ダンテは尋ねる。
「な、リアラ。オッサンを物に例えるとなんだ?」
「物に?」
「ああ」
ダンテの問いに、リアラはうーん、と考え込む。
「…月、かな」
ポツリと呟かれたリアラの言葉に、ダンテは目を見開く。
「太陽みたいに強い光を放っているわけではないけれど、優しい光で照らしてくれて…守ってくれる、から、かな」
そう言うと、向かいからククッ、と笑う声が聞こえて、リアラは首を傾げる。
「どうしたの?」
「いや…ちょっと思い出してさ」
以前、自分はディーヴァに言った。ディーヴァは『太陽』で、自分は『月』だと。
まさかここで、「ダンテは『月』だ」と、その言葉を聞くとは思わなかったけれど。
その話を聞いて、そっか、とリアラは頷く。
「きっとディーヴァちゃんも、そう思ってくれてるよ」
そう言って笑うリアラにほほえましさを感じて、ダンテも笑い返す。