▼ 5日目 8
少しして、リアラがトレーを持って戻ってきた。白いティーカップには、温かな湯気をたてたミルクティーが入っている。
「はい、どうぞ」
「ああ、ありがとな」
「いいえ」
ダンテの前にティーカップを置き、自分の分も置くと、リアラは向かいのソファに座る。
「…で、相談って?」
「あー、その、さ…。リアラから見て、オレの気持ち、ディーヴァに伝わってると思うか?」
「気持ち、って、好きっていう気持ち、ってこと?」
「ああ」
困ったように頭を掻き、目を泳がせるダンテに、ああ、やっぱりそういうことか、と心の中で納得したリアラは正直に答える。
「私はダンテの気持ち、ちゃんとディーヴァちゃんに伝わってると思うよ。じゃなきゃ、あんなに幸せそうな顔しないと思う」
昨日の朝、朝食を食べている時に自分が言った言葉に嬉しそうに笑っていたディーヴァを思い出す。好きじゃなきゃ、きっとあんな顔はできない。
そっか、とどこか安心したような顔で頷き、ダンテは続ける。
「たださ、オレがどれだけディーヴァが好きかってこと、ディーヴァに伝わってない気がするんだよなー。こんなに好きなのに…」
そう言って拗ねる仕草はどこか子供っぽくて、リアラはくすりと笑みを零す。
「なかなか伝え返すことができないだけなんじゃないかな?ディーヴァちゃんって、恥ずかしがり屋さんだと思うし…」
「そうなんだろうけどさ、やっぱり言葉とか、行動で伝えてほしいんだよな。じゃないとわかんねーし」
「女の子から言うことって、なかなか難しいと思うよ?好きって思ってても、いざ言葉にするとなると恥ずかしいし…。ダンテみたいに素直に言えたらいいけどね」
そう言って笑うリアラに、ダンテは尋ねる。
「リアラもそうなのか?」
「え?」
「オッサンに素直に気持ち言えねーのか?」
リアラはうーん、と唸る。
「…そういうわけじゃないけど、上手くは伝えられないよ。わかるように伝わってるかなんてわからないし、行動で表すことも苦手だし…」
依頼で会う相手なら、どんなに嫌な相手でも笑顔で接することができる。仕事だから、と割り切ることができる。
だが、一度気を許した相手だと、途端にどう伝えていいかわからなくなるのだ。こういうことがある度に、人との付き合いが苦手だと思い知らされる。
…けれど。