▼ 突然の誘い
「リアラ、一緒に出かけよ!」
「…え?」
ぽかぽかと温かな陽射しが窓から射し込むお昼時、雑誌を読んでいたリアラはリサからの突然の誘いにぱちぱちと目を瞬かせる。
「え、っと…今から?」
「ううん、お昼ご飯食べてから。今日は学校休みで時間があるし、特に依頼もなさそうだし」
元々依頼自体、それ程来ないのだけど。今日は珍しく依頼が重なって、父とダンテ、リコとネロがそれぞれ依頼に行っている。なので、今家に居るのは自分とリアラ、そして母だけ。こんなことはあまりないし、せっかくだから女子二人で出かけようと思い立ち、こうやって話しかけたわけだ。…正確に言えば、自分の影の中にオニキスがいるけれど。
「ここに来て十日経つけど、リアラほとんど服買ってないでしょ?いい機会だし、いろいろと買い物しようよ」
「でも、そんな…住まわせてもらってる身なのに、物を増やしても…」
「遠慮しなくても大丈夫だよ。ね、ママ」
「そうですね、いい機会ですし、二人で行ってらっしゃい。たまには外へ出て、気分転換をするのもいいことですよ」
キッチンで皿を拭きながら、緋紗はにこやかに頷く。ほら、ママもああ言ってるし!と目をキラキラさせたリサに言われてしまえば、リアラには断ることができなかった。
「うん…わかった」
「やった!じゃあ、お昼食べたら準備して出発ね!ふふ、何着ようかなぁ」
もう買い物のことで頭が一杯なのか、軽い足取りでリサは二階へと上がっていく。それを呆然と見送るリアラに、洗い物を終えた緋紗が近づき、話しかける。
「あなた、依頼以外でほとんど外に出ることがないでしょう?あの子なりの気遣いなんですよ。遠慮せずに行ってらっしゃい」
「緋紗さん…」
リサなりに、いろいろ考えてくれたのだろうか。なら、楽しまなくては彼女に悪い。彼女だって、自分と出かけることを楽しみにしているのだから。
「…そうですね、じゃあ、行ってきます」
緩やかに笑みを浮かべたリアラに、緋紗も柔らかな笑みを返した。