▼ 5日目 1
『あの女、どうやって食べてやろうかしら…鏡も取り返さないといけないし…』
暗がりの中、ブツブツと呟く悪魔。側には金縁の鏡が置かれている。
現在、悪魔がいるのはとある屋敷。街から離れた場所にあるこの屋敷はあまり人に知られておらず、静かで身を隠すには最適の場所だった。
それに、何よりも…。
「どうしたんだい?そんなに険しい顔をして」
ガチャリと扉が音を立てて開き、一人の男性が姿を現した。金髪金目の美青年で、ウェーブのかかった髪が歩く度にフワフワと揺れる。
青年は悪魔の傍まで来ると、屈んで彼女の顔を覗き込んだ。
『あの女をどうやって食べてやろうか考えてたのよ。普通に食べたんじゃつまらないからね』
「あの女って、君が狙ってるっていう半魔の子のことかい?」
『そうよ。早く食べたいっていうのに、あの力が忌々しいったらありゃしない』
そう言って舌打ちする悪魔に、青年はしばし思案すると口を開いた。
「その子の他にも狙ってる奴がいるんだろう?確か、同じ半魔の男と、天使の子だったかな?」
『そうだけど、それがどうしたの?』
「そっちを利用するんだよ。天使の子の方は、戦えないんだろう?捕まえて囮にすればいい」
天使のような笑みでさらりと恐ろしいことを言う青年に、悪魔は歪んだ笑みを浮かべる。
『…なるほどね。二人に手を出すことを許しはしないあの女なら、絶対に来るわね』
「いい考えだろう?上手くいったら、その子の身体は僕にくれよ。綺麗な子なんだろう?」
『好きになさい。私は魂にしか興味がないわ。ただし、天使は別だけど』
「わかってるさ。ありがとう、君は最高のパートナーだよ、セラータ…」
『貴方もね』
恍惚とした表情で言う青年の顎に手を添え、悪魔は紅い唇を吊り上げた。