コラボ小説 | ナノ
 まだまだ、これから

「すっかり遅くなっちゃったね」

「うん、いろいろと付き合わせちゃってごめんね?」

「いいよ、たくさん見れて楽しかったし。またこうやってお出かけしようね」

「うん」


リサの言葉にリアラは嬉しそうに頷く。
あれから恋人の服を見て回り、ショッピングモールを出た時には空は夕日で赤く染まり始めていた。夕焼けを背景に家への帰り道を歩く二人の手にはたくさんの紙袋がある。


「ワンピース、リアラの気に入ったのがあってよかったね」

「うん。ワンピースなんて買ったの初めてかも、着るのが楽しみ。ありがとう、リサ」

「どういたしまして。私も、友達とお揃いの物買うのなんて初めて。いつ着ようかなあ」


二人で会話を楽しんでいる中、ふいにリアラが少し先を歩く見慣れた後ろ姿に気づいた。


「あ、あれ、リコとネロじゃない?」

「あ、本当だ。リコ、ネロ!」


大きな声でリサが呼びかけると、二人がこちらを振り向いた。


「あ、リサ。それにリアラも」

「お疲れ様。依頼の帰り?」

「うん、ちょうど終わったところだよ。二人は出かけてたの?」

「うん、リサが出かけようって誘ってくれたの」

「いろいろ見て回れて楽しかったよ。またこうやって出かけようねって話してたところなんだ」

「そうなんだ、よかったね」


笑顔で話してくれる二人にリコは優しい笑みを浮かべて頷く。
一方、ネロは三人の話を黙って聞いていた。それに気づいたリアラは首を傾げる。


「?どうしたの、ネロ?」

「!あ、いや…」

「ああ、気にしなくて大丈夫だよ、リアラ。こいつ女の子苦手で、こういうのに慣れてないだけだから」

「ばっ、余計なこと言うなよ、リコ!」

「だって、本当のことだろ?」


リコの言葉に顔を赤く染めるネロに、リアラはああ…、と納得する。
この世界に来た次の日、隣家であるバージル夫妻の家に事情を説明するための挨拶に行った時、自分の世界より成長しているネロの姿に驚いた。住む世界が違えば多少性格も違うもので、こちらのネロは穏やかで落ち着いた性格をしていた。とはいえ、根っこの部分は似ているのか異性が苦手ということは変わらず、自分と会う度に戸惑った様子を見せる彼に、あちらにいるネロの姿が重なり、リアラは思わず笑みを浮かべていた。


「いいよ、気にしないで。まだ会ってそんなに経ってないもの、ゆっくり慣れてくれればいいよ」

「だってさ。よかったなネロ、リアラが心の広い人で」

「お前なあ…!」


笑顔で言うリコに憤慨するネロ、またやってる…、とそれを呆れた目で見るリサ。そのやり取りを聞きながら、リアラは目を閉じる。


(まだまだ、これから)


焦ることはない。少しずつでいい、ゆっくりでいい。まだまだ時間はあるのだから。
今、この時間を大切にしよう。そして、一つ一つ積み重ねていこう。それが、大事なことだと思うから。
夕日に照らされ長く伸びた四つの影は、家族のように寄り添っていた。