▼ Will you marry me? 6
「はい、OKです!次は新婦さんが椅子に座って、新郎さんが寄り添うようにお願いします!」
「わかりました」
教会に、スタッフの声が響く。パシャパシャとカメラが写真を撮る音、照明や椅子など、小道具を動かす音。普段は静かなこの場所に、音が溢れている。
撮影の様子を見ながら、雪菜は心の中でほっと安堵の息をつく。
(ちゃんとできてるみたい、よかった…)
多少の不安があったものの、仕事だと切り換えたのか、リアラは落ち着いて撮影に望んでいるし、若も大人しく真面目に仕事をこなしている。
しかし、雪菜には一つの疑問があった。
(何であの時、私の身体のサイズなんか計ったんだろう…)
新たに二組のカップルを撮影すると決まった後、これ以上時間がかかると6月中にポスターが出せない、ということで、ウェディングドレスも専門店で製作することになった。雪菜はデザインとできあがったドレス・タキシードの確認をしたのだが、製作途中で、ドレスを作る職人に、『見本としてサイズを計らせてください』と言われたのだ。断る理由もなかったので、言われる通りにサイズを計ったが、店によくある基準の物に合わせればよかったのではないだろうか。
雪菜がそんなことをぐるぐると考えていると、スタッフの声が響いた。
「はい、お疲れ様でしたー!じゃあ次の方、お願いします!」
ああ、もう次のカップルか、誰かなあ、と思い、雪菜が扉の方へと視線を向けると、そこには予想外の人物がいた。
雪菜は思わず口を開く。
「ね、ねこちゃん…!?」
「やっほー、つなちゃん♪」
雪菜の目の前には、たまごねこと初代が立っていた。
たまごねこは白い素材と淡いピンクのレースが重なったウェディングドレスを着ていた。ミニスカート丈のドレスは膝上から下がレースで覆われている。袖のないタイプで、首の後ろで結んだ白い紐とレースでできた肩紐とダブルになっている。胸元の右側に濃いめのピンクの大きなリボンがついている。
初代は王道の白いタキシードをきており、基本的な形のネクタイをしている。
呆然とする雪菜に、たまごねこは背中を押して促す。
「ほらほら、つなちゃんも準備して!」
「え?え?準備って、何を…」
「そりゃあ、撮影の準備♪」
コンタクトをしたたまごねこに楽しそうな笑みを向けられ、雪菜は戸惑う。
「さ、撮影!?私が!?」
「そうそう!スタッフさーん、お願いしまーす!」
たまごねこが大きな声で言うと、どこからともなく二人のスタッフが現れ、それぞれ雪菜の腕を掴んだ。
「じゃあ、行きましょうか」
「新郎さんがお待ちですから、急ぎましょう」
「え?え?」
状況を把握できていない雪菜を他所に、スタッフ達は雪菜を引きずっていく。
「ねこちゃーん!?」
「いってらっしゃーい♪」
ひらひらと手を振るたまごねこの姿を最後に、教会の扉が閉まった。