コラボ小説 | ナノ
 Will you marry me? 4

夜も更け、事務所もしん、と静まり返ったころ。
たまごねこは居間の椅子に座って何かを見ていた。そこへ、誰かがたまごねこへと近づく。


「まだ起きてたのか」

「あ、おっさん」


声のした方へと顔を向け、たまごねこは呟く。


「何見てんだ?」

「つなちゃんのスケッチブック。見せてってお願いしたら、夕飯の後に貸してくれたの」


たまごねこの隣りに座り、髭はスケッチブックを覗き込む。雪菜のスケッチブックにはウェディングドレスの基本の型から彼女が考えたデザインまで、たくさん描かれている。ところどころにメモもしてあり、彼女の熱意が窺える。
髭は感嘆の声を漏らす。


「すごいな…」

「ね。本当にこの仕事が好きなんだなあってわかるよね」


微笑むと、たまごねこはパラパラとスケッチブックを捲る。
ふと、何かを思い出したように髭が言った。


「そういえば、夕方に同じところから新しい仕事が来てたな」

「ああ、新郎役としてあと二人入れてほしいってやつだっけ」


たまごねこが頷く。
夕食の終わった後、依頼先から新たな仕事の連絡が来た。リアラの相手役を選んだ時に雪菜に事務所のメンバーを見せてもらったためか、もう二組のカップルを作って写真を撮りたいと言ってきたのだ。となると、必然的にタキシードのデザインを二つ描かないといけないわけで、ちょうど風呂から上がってきた雪菜は、「一週間で終わらないかも…」と呟いていた。その場にいた全員が同情したくらいだ。


「新婦はどうするんだ?」

「あっちで決めるらしいよ。こっちは女の子リアラちゃんしかいないし」


たまごねこの言葉に、髭は何か考え込むように口に手を当てる。たまごねこが首を傾げると、髭は何か思いついたのか、ニヤリと口角を上げる。


「…いや、いるじゃねぇか。ちょうど二人」

「?」

「ちょっと耳貸せ」


髭に言われ、たまごねこは顔を近づける。髭が彼女の耳元で小さな声で企んだことを話すと、たまごねこは目を見開き、感心したように言う。


「ははぁ、なるほどねぇ…。となると、全員の協力が必要だけど」

「それは明日の朝、雪菜が出てから話す。若は後でこっそり話せばいいだろ」

「新郎は?」

「この流れだと、必然的に決まってるだろ」

「まあね。依頼先への連絡は私がしとく感じ?」

「ああ、頼む」

「了解。つなちゃんのためだからね」


お互いに楽しそうに笑うと、二人は綿密な計画を立て始めた。