▼ 3日目 19
「それ、子守唄か?」
「ダンテ…」
後ろを振り返ると、そこにはダンテがいた。隣座るぜ、と一言言って隣りに腰を下ろしたダンテに、リアラは話しかける。
「ディーヴァちゃんの傍にいなくていいの?」
「ちょっとくらいなら大丈夫だよ」
そう言って、ダンテは空を見上げる。
「星、好きなのか?」
「…うん。あっちの事務所でも、よくこうして夜空を見上げてるよ」
頷くリアラに、ダンテは静かに問いかける。
「…あっちの『オレ』に会えなくて、寂しいか?」
ダンテの言葉にリアラは目を見開くが、申し訳なさそうに小さく頷く。
「…うん。ごめんね、こんなにダンテ達はよくしてくれてるのに…」
「仕方ないだろ、誰だって知り合いがいなきゃ寂しくもなるさ」
そう言うと、ダンテは膝の前で腕を組む。
「さっきの唄、昔、母さんが歌ってくれた子守唄と同じだ」
「本当?じゃあ、同じ唄なんだね。私のところは、母様とエヴァさんが一緒に歌詞を考えたんだよ」
「家族ぐるみで付き合ってたって話してたもんな、お前。本当に仲よかったんだな」
「うん。…結局、私は母様を守れなかったけど」
「お前のせいじゃないだろ」
「ううん。…私の、せいなの」
ふるふると首を振ると、リアラは話し始める。
「昨日、ディーヴァちゃんに聞かせられる内容じゃなかったから話せなかったんだけどね…母様は、私の目の前で殺されたの」
ぎゅ、とリアラは手を握りしめる。
「私が先に悪魔の出した針で串刺しにされてね…私を助けようと駆け寄った母様も、私と同じように串刺しにされた。…全身を、真っ赤に染め上げて」
今でも鮮明に覚えている、悪魔の攻撃で全身を貫かれ、それでもこちらに必死に手を伸ばして「リアラ」と娘である自分の名前を呼んだ母の姿を。
「皮肉だよね、その日に悪魔の力を覚醒させて、その上満月で暴走して…もっと早くに、母様を守れる力がほしかった」
ぎゅ、と唇を噛みしめると、リアラはダンテを見つめる。