コラボ小説 | ナノ
 Will you marry me? 3

一週間後。
軽い足取りで、雪菜が事務所に帰ってきた。


「ただいまー!」

「あ、つなちゃん、おかえりー」

「お、雪菜、おかえり」


事務所にいたたまごねこと初代が出迎えの言葉を述べる。


「つなちゃん、ご機嫌だね。もしかして、仕事終わった?」

「いや、まだあるんだけどさ」


苦笑しながら初代の隣りに座り、雪菜は続ける。


「やっとね、リアラのウェディングドレスができたんだ!」

「本当!?おめでとう、つなちゃん!」

「よかったじゃねぇか」

「えへへー」


初代に頭を撫でられ、照れたように雪菜は笑う。


「どんな感じになったの?」

「それは撮影時のお楽しみー」


にこにこと楽しそうな笑みを浮かべながら、雪菜は告げる。


「それで仕事終わりなんじゃないのか?」

「それがね、新婦と新郎を一緒に撮りたいらしくて、リアラの相手を誰にするか決めかねてたみたいで、『誰かいい人いませんか?』って聞かれたのよ。だったら同じ『sing doll』のダンテ達がいいかなと思って話したら、即採用されてね。みんなの写真見せたら若が選ばれた」

「若がか?」

「うん、『年上の奥さんと年下の旦那さんもいいかも』だって」

「確かにあの二人だと、そうなるね…」

「うん。まあ、依頼先が決めたことだから。若にはちゃんと言っておく。それと、タキシード作らないといけないから、明日、採寸に連れて行かないと」

「タキシードも雪菜が作るのか?」

「私はウェディングドレスしか勉強してないから、タキシードは無理。デザインだけして、作るのはあっちがやるって」

「デザインはするんだな」

「うん、ウェディングドレスもデザインしたからお願いしたいって。あと一週間はかかるね」


うーん、と雪菜は背伸びをする。
ふいにたまごねこが身体を乗り出し、雪菜に尋ねた。


「ね、つなちゃん、ドレスのデザインって、他にも描いてる?よかったら見せて!」

「うーん、それだとリアラのやつもバレちゃうんだけど…。いいよ」


普段、雪菜は一つのデザインを描いて、それを直しつつ描いていくので、あまりたくさんデザインを描いておくことはしないのだが、今回は『何種類かデザインを描いてほしい』と言われていたので、いくつかデザインを描き溜めていた。
雪菜が鞄からスケッチブックを取りだそうとしたその時、玄関の扉が開いた。


「ただいまー!」

「ただいま。あ、雪菜、帰ってきてたのね。おかえりなさい」

「あ、リアラ、若、おかえりー」


先程話題に上がっていた二人が帰ってきた。手には買い物袋を持っている。


「買い物?」

「うん、今日の夕ご飯の買い出しに。若に手伝ってもらってたの」

「今日はカレーだぜ!」

「お、いいねー。今日の当番は?」

「俺とリアラだ」

「お、初代とリアラか。リアラは女の子だからよく入るね」


やばいやばい、私も料理できるようにならなきゃ、と雪菜は苦笑する。


「カレー…初代とリアラちゃんの作るカレー…うふふ…」

「ねこちゃん、好きな二人が作るから興奮するのはわかるけど、ちょっと落ち着こうか」


怪しい笑みを浮かべるたまごねこを宥める雪菜。
雪菜は初代へ顔を向けると、謝るように片手を立てた。


「初代、ちょうどいいから二人にさっきの話しときたいんだけど、ちょっとの間、夕飯の準備任せてもいい?」

「ああ」

「ありがと、お願い」


雪菜はリアラと若へと視線を移し、不思議そうに首を傾げる二人に話しかけた。


「リアラ、若、ちょっと話があるんだけど、いい?」

「うん。仕事の話?」

「うん。例の撮影の仕事。あっちの依頼で若も加わることになったから、若にも話しとかないと」

「俺も?」

「そ。あっちで話そうか」


そう言い、雪菜は立ち上がった。