▼ 3日目 7
あれからすぐ事務所に戻ってきたリアラとダンテは、二人で他愛もない話をしつつ、ディーヴァの帰りを待っていた。
リアラがキッチンで作業をしていると、ガチャリと音を立てて事務所の扉が開いた。
「ただいまー!」
「あ、お帰りなさい、ディーヴァちゃん」
「お帰り、ディーヴァ」
開いた扉から姿を見せたディーヴァを抱きしめ、彼女の額にキスをするダンテ。その様子を見て、リアラはくすりと笑みを溢す。
リアラはゆっくりとディーヴァに歩み寄る。
「学校、お疲れさま」
「ありがとう、リアラお姉ちゃん。今日は何してたの?」
「今日はダンテに街を案内してもらってたの。私の住む街とちょっとずつ違ってて面白かったわ」
「そっか、よかったね」
「ええ」
リアラが頷いたちょうどその時、キッチンからチーンと何かが終わった音が響く。キッチンを振り返りながら、リアラが言う。
「あ、ちょうどできたみたいね」
「ちょうど?何か作ってたの?」
「うん、見に来る?」
リアラの言葉に頷き、ディーヴァがキッチンに入ると、リアラがオーブンの扉をあける。
中から出てきたのは…
「うわぁ…!」
目の前の物に、ディーヴァは目を輝かせる。
オーブンから出てきたのは、ディーヴァの大好物であるプリンだった。できたばかりのそれは湯気を上げていて、型から見える表面は滑らかでおいしそうだ。
「うん、ちゃんとできてる」
プリンが固まっているか確認し、リアラはそれをオーブンの中に戻す。
「まだ熱いから、しばらくこのままにしておくね。晩ご飯を作る時に冷蔵庫に入れておけば、食べる時にはちょうどよく冷えてると思うよ」
「すっごくおいしそう!ありがとう、リアラお姉ちゃん!」
「ふふ、昨日はディーヴァちゃんにごちそう作ってもらったからね、今日は私がディーヴァちゃんの好きな物作ってあげるね」
「うん!」
頷くと、ディーヴァはリアラの両手を掴んで言う。
「じゃあ、今から材料の買い出しに行くついでに服買いに行こう!昨日から話してたことだし!」
「それは嬉しいけれど…私、お金持ってないよ?」
「大丈夫、それくらいのお金はあるから!それに、リアラお姉ちゃんもその格好じゃ出かけ辛いでしょ?」
確かに、ディーヴァの言うことも最もだ。リアラは頷く。
「…うん、そうだね。じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「決まりだね!じゃああたし、急いで着替えてくる!あ、ダンテも着替えてきてよ?」
「はいはい」
後ろで様子を見守っていたダンテに声をかけ、ディーヴァは2階へと上がっていく。後に続いて階段を上がっていくダンテを見送り、リアラは微笑んだ。