コラボ小説 | ナノ
 Will you marry me? 1

夏が近づき、徐々に暑くなってきたある日。

バターンッ!

「う゛ああー、疲れたー」


事務所の扉が勢いよく開き、雪菜が転がりこむように室内に入ってきた。


「お帰りー、つなちゃん。大丈夫?」

「ただいまー、ねこちゃん…。うう、死にそう…」

「お疲れさま。何か飲む?」

「うん。お茶ください…」

「了解」


苦笑して、たまごねこはキッチンへと向かう。
やっとのことでいつも食事で使っているテーブルまでやってくると、雪菜は椅子に座り、テーブルに突っ伏す。う゛ー…と唸り声を上げていると、近くからガチャリ、と扉を開ける音がし、足音がこちらに近づいてきた。


「お帰り。かなりお疲れのご様子で」

「おじさん…」


ぽん、と大きな手が頭に乗せられ、雪菜が顔を上げると、髭が苦笑しながらこちらを見ていた。風呂上がりなのか、肩にはタオルがかけてあって、濡れてしっとりとした銀色の髪からは雫が滴っている。
『sing doll』達は機械であるにも関わらず、皮膚が人間に近いもので出来ており、防水性が高いため、人間と同じようにシャワーを浴びることができる。お風呂は長時間水に浸かってしまうので、さすがにだめだが。


「おじさん、髪はちゃんと拭かないとだめだって何回言ってるの」

「悪い、ついな」


悪びれずに謝る髭に雪菜はため息をつく。
どうも『ダンテ』と名のつく四人は、どこか大雑把なところがあるらしい。2様と初代は時々忘れるものの、ある程度は守ってくれているが、若と髭はほぼ毎日こんな感じだ。大抵はリアラや雪菜、たまごねこの女子群が世話を焼いている。
ぺちぺちとテーブルを叩き、雪菜は口を開く。


「ほら、ここ座って。髪拭いてあげるから」

「疲れてるなら無理するなよ」

「放っとけば、そのまま拭かないで寝るでしょ。ほら、早く」


急かす雪菜に、髭は大人しく隣りの席に座る。
髭の肩からタオルをとると雪菜は立ち上がり、髭の背後に回る。


「わざわざ立たなくてもいいんじゃねえか?」

「立った方がやりやすいの。座ったままだと手、届かないし」


そう言い、雪菜は髭の髪をタオルで拭いてやる。強く擦らないように気をつけつつ、優しく丁寧に拭いてやる。
雪菜がそうしていると、キッチンへ行っていたたまごねこがお盆を手に戻ってきた。


「つなちゃーん、お茶持ってきたよー」

「あ、ありがとー。あれ?三つってことは、それ、おじさんの分?」


テーブルに置かれたお盆の上のコップの数に、雪菜は首を傾げる。コップの数は三つ。今ここにいるのは自分とたまごねこと髭だけだ。となると、必然とそうなるだろう。


「うん、コップに氷入れてる時におっさんの声聞こえたから、おっさんの分も用意したんだー」


頷くと、はい、どうぞ、と言って、たまごねこはお茶の入ったコップを髭に渡す。


「お、悪いな」

「いいえー。はい、つなちゃんもどーぞ」

「ありがとう」


雪菜にもお茶を渡したたまごねこは、雪菜の向かいの席に座る。