コラボ小説 | ナノ
 1日目 9

「ダンテ、遅いなぁ…」


ソファに座って頬杖をつき、ディーヴァは呟く。早く帰ってくると言ったのに、こんなに遅いなんて。まさか、怪我をしているのでは…。


「うー…ダンテのバカ!」


こんなに心配させるなんて、とディーヴァが愚痴り始めたその時、後ろから扉が開く音が響く。ディーヴァが後ろを振り返ると、階段下の脇の収納スペースからケルベロスが黒いゴールデンレトリバーの姿で出てきていた。


「ケル、どうしたの?」

『こちらに近づく気配を感じてな。我と似た悪魔…いや、半魔か?』


そう呟いてケルベロスが事務所の扉に顔を向けたその時、扉が開いてダンテが姿を現した。


「ダンテ!」

「悪い、遅くなった」

「もう、遅いよダンテのバカ!でも、おかえり」

「ああ、ただいま、ディーヴァ」


自分に抱きつくディーヴァを抱きしめ返し、ダンテは帰宅の言葉を告げる。そこへ、ケルベロスが近づいてきた。


『イチャついているところ悪いが…ダンテ、お主、誰かを連れてきたのか?』

「え?」


ケルベロスの言葉に、ディーヴァは目をぱちくりとさせる。ダンテは思い出したようにああ、と声を上げた。


「そうだった、さっき依頼の帰りでこいつに会ってさ、別の世界から来て行くあてがないらしいから連れてきた」


そう言うダンテの視線につられてディーヴァが下を見ると、ダンテの足元に白い狼がいた。見るからに普通の狼とは違う外見に、ディーヴァは悲鳴を上げる。


「ひっ、悪魔…!」


怯えて後ずさるディーヴァに、ダンテは慌てて説明する。


「落ち着けディーヴァ、こいつはオレと同じ半魔だ、今は訳があって元の姿に戻れないだけで…」

「そんなの知らない!わざわざ悪魔を連れてくるなんて…ダンテのバカ!」


そう言って走って二階へ上がってしまうディーヴァ。ディーヴァと自分を見て困った顔をするダンテに、リアラは頭で彼の背中を押して促す。


(私のことはいいよ、行ってあげて)

「けど…」

(悪魔に狙われやすいんでしょう?だったら怖がるのも無理はないよ。私は大丈夫だから)

「…悪い、ディーヴァにはちゃんと説明しとくから。そこのソファでも使って休んでてくれ」

(うん、ありがとう)


そう言い残し、急いで階段を上がっていくダンテを見送るリアラに、黙って様子を見ていたケルベロスが話しかける。


『…お主は、苦しくないのか?あんな言葉をかけられて』

(…人からの酷い扱いなら、経験済みよ。言葉だけならかわいいものだわ)


そう言うと、リアラはケルベロスに向かって苦笑する。


(いきなり来て、お世話になることになっちゃってごめんなさい。帰り方がわかったらすぐに出て行くわ)

『…我は別に構わん。お前はディーヴァに手を出しそうにないからな』

(好かれているのね、あの子)

『…まあな。我はもう戻る』

(ええ、おやすみなさい)


階段下の脇の収納スペースに戻るケルベロスを見送ると、リアラはソファに上がり、身体を横たえる。


(疲れた…)


精神的な疲れも、肉体的な疲れもどっと来て、リアラは息をつく。
ゆるゆるとやってくる睡魔に勝てず瞼が落ちていく中、リアラはあちらの世界にいるかの人を思い浮かべる。


(ダンテ、さん…)


瞼が閉じられると同時に、彼女の頬を涙が伝った。