▼ 1日目 8
(私はリアラ、リアラ・フォルトゥナよ。よろしくね)
「あーっと、オレは…」
(知ってる、ダンテ、でしょう?私の住んでいる世界にもいるから)
「私の、ってことは、お前、別の世界から来たのか?」
(ええ、どうしてここに来たのかはわからないけど…)
困ったように言うリアラに、ダンテはしばし思案するとある提案をした。
「なあ、行くところがないなら、オレの事務所に来るか?」
(え、でも…)
「別の世界から来たんなら、行くあてないだろ?とりあえずウチに来て、落ち着いてから帰り方探せよ」
(…ありがとう。じゃあ、少しの間お世話になります)
「そんなにかしこまらなくていいって。お前って真面目だな」
苦笑すると、ダンテはリアラを連れて廃墟を出る。
「元の姿に戻らないのか?」
(次元を越えたせいか、元の姿に戻れなくって…)
「…そうか。まあ、すぐに戻れるって」
(うん、ありがとう)
先程会ったばかりなのに、二人は慣れた様子で会話を交わす。
「そういえば、リアラっていくつなんだ?」
(23だよ)
「マジ?オレより年上か、全然そうは見えねーな」
(この姿だからだと思うよ。ダンテはいくつ?)
「オレは19」
(私より4つ下かぁ)
「そっちのオレっていくつなんだ?」
(けっこう年上だよ?36歳)
「うわ、おっさんじゃん」
(あはは、まあね)
ダンテの言葉にリアラは苦笑する。
「そっちのオレを知ってるってことは、リアラはそっちのオレと暮らしてるのか?」
(うん、ちょっと訳があって)
「そうか。オレはディーヴァっていう天使の血をひくやつと暮らしてるんだけどさ、かわいいんだぜー、あいつ」
(天使の?天使っているのね…)
「リアラは天使に会ったことがないのか?」
(うん。ダンテは?)
「オレもディーヴァが初めてだ。しかも天使って悪魔に狙われやすくってさ、半魔のオレですらディーヴァが欲しくなる時があるんだよ」
(ダンテでも?)
「ああ、特にこういう満月の日は」
(満月…)
ダンテの言葉に、リアラは空を見上げる。空には、弧を描いた月が浮かんでいる。
(私の世界も満月だったな)
「そうなのか?もしかしたら、それがリアラがここに来たことと関係があるのかもしれないな」
(ええ、そうね)
頷き、二人は事務所を目指して歩みを進めた。