▼ 1日目 1
丸く孤を描いた月が辺りをまばゆく照らす中、悪魔相手に踊るように戦う姿が一つ。
ギィィィッ!!
「全く、満月だから仕方ないとはいえ、数が多いんだから!」
嫌そうに顔をしかめると、リアラはスケアクロウ達の攻撃を避け、次いでレイザードの鉤爪を下から振り上げる。金属さえ切ってしまうそれに切り裂かれ、目の前のスケアクロウは耳障りな声を上げて砂となる。
ゆらゆらとした動きで近づいてくるスケアクロウ達に、リアラはレイザードを構える。
「歩いてるんだか、踊ってるんだかわからないわね。踊るんなら、もっときれいに踊りなさい!」
言うと同時にスケアクロウの群れに突っ込み、レイザードを振り上げる。時には身体を反らせ、時には足を振り上げ、舞うように戦うリアラに為す術もなく、10分程でスケアクロウ達は砂になって消えていった。
軽く振り、レイザードをブレスレットの姿に戻すと、リアラは息をつく。
「他に悪魔の気配はないし、さすがにもう出ないかな」
辺りを見回し、リアラは呟く。
今回、なぜリアラがフォルトゥナにいるのかというと、ネロに依頼の手伝いを頼まれたからだ。
フォルトゥナは悪魔の現れやすい土地だ。満月になると一層悪魔が現れやすく、その上満月の影響で凶暴になる。今でも教団にいた騎士達が自主的に街の見回りをしているし、ダンテと同じく事務所を営むネロも依頼を受けて悪魔退治をしているが、それでも数は多い。そのため、1週間前にネロからリアラに依頼を手伝ってくれるよう電話がきた、というわけだ。
(あっちも終わった頃だろうし、合流しようかな。あ、街の人達に見つからないように帰らなきゃ)
今の自分の姿を思い出し、リアラは呟く。
満月による影響で、今の自分は狼の耳としっぽが付いた半獣の姿だ。街の人に見つかってしまうと、悪魔が出たと騒ぎになりかねない。
(こんな満月の日に外に出てる人なんていないと思うけど…)
一応用心しよう、そう思い、リアラが一歩踏み出した時だった。