▼ 服の好み
「ねぇリアラ、あれとかどう?」
「うーん、あれはちょっとかわいすぎるかな…裾のレースとか」
「えー、リアラ、さっきからそればっかり!たまにはああいうの着てみて、ダンテ驚かせればいいのに!」
「お、驚かせるって…」
リサの言葉に頬を染めながら、リアラは困り顔で返す。
家から近いショッピングモールに来て二時間、リサとリアラはいろんな店を回って服を見たが、なかなかリアラの好みに合う服がなく、まだ一着も買っていなかった。それに反して、リサの荷物だけが増えていく。
申し訳なさそうにリアラが呟く。
「ごめんね、つまらない…よね」
「そんなことないよ、こうして女の子だけで買い物するのって結構楽しいし。それに、リアラと私の服の趣味が違うだけでしょ?」
だから、そんな顔しない!とビシッと指を指され、戸惑いながらもリアラは頷く。
「う、うん」
「わかったならよし!」
にこっと笑ったリサは、ふいにあることを思いつく。
(そうだ、あのお店ならいいかも)
あのお店なら、リアラの好みに合うかもしれない。そう思ったリサはリアラの手を引く。
「リサ?」
「行こ!あのお店なら、リアラの欲しい服が見つかるかも!」
不思議そうに首を傾げるリアラを連れて、リサは目的の店に向かって歩き始めた。
* * *
「どうかな?」
「うん、すごくいい!ありがとう、リサ!」
「どういたしまして」
満面の笑顔を浮かべるリアラに、リサはよかった、と安堵の笑みを浮かべる。
リサがリアラを連れてやってきたのは、母と二人で出かけた時に母がよく利用する店。普段使いしやすいシンプルな服がたくさん置いてあり、あまりレースやリボンなどで装飾されていない。ここならリアラの好みに合うかもしれない、と思ったのだ。その予想通り、店内を見回したリアラはぱあっと目を輝かせ、さっそく服を手に取って選んでいる。
「あ、このカーディガンかわいい」
「あ、本当だ。丈長いのと短いのがあるね、リアラはどっちがいいの?」
「ショートパンツが多いから、短い方がいいかな。丈が長いのを上着として着るっていう手もあるけど」
「丈長いのなら、レギンスと合わせるっていう手もあるよ?」
「あ、それいいかも」
きゃっきゃとはしゃぎながら、二人で服を選んでいく。
リアラの選ぶ服を見ていたリサはポツリと呟く。
「リアラってママと好みが似てるね」
「緋紗さんと?」
「うん」
ぱちぱちと目を瞬かせるリアラにリサは頷く。
あまり装飾のないシンプルな服を好むところと選ぶ色の系統が母とよく似ている。…もちろん、似ているというだけで、淡い色も好きだったり、ゆったりした服を好きだったりと違うところもあるけれど。
「今度、ママと出かけてみたら?好みが似てるから、けっこう話弾むと思うよ」
「緋紗さんと、かあ…」
「うん。パパと出かけてばっかりだから、たまには連れ出してみて?女性同士だからこそ話せることもあるだろうし」
「…そっか。わかった」
柔らかな笑みを浮かべて頷いたリアラに、リサも笑顔で頷く。
「服はたくさん見たから、今度はアクセサリーとか見たいな。いい?」
「うん、いいよ」
「やった!じゃあ、私のお勧めのところ連れて行ってあげる!」
「うん、お願いね」
仲よく手を繋ぎながら、二人は次の店へと向かったのだった。