コラボ小説 | ナノ
 Teaching each person

楽しかったデートから2週間、日差しが強さを増し、春から夏へと移り始めたある日。


「うぅ、またわかんなくなったぁー!」


ノートに書かれた数式を見て唸り、机に突っ伏す紅。その様子を隣で見ていたリアラは苦笑する。


「ほら、がんばって紅。途中まではできてるんだから」

「でもー…」

「わからないところは教えてあげるから。まずは書いたところまで見せて」

「うん…」


頷き、紅は手元のノートをリアラに見せる。
一方、隣ではバージルが若に同じく数学を教えていた。…なぜか、若は胴体と足を椅子にくくりつけられた状態だが。


「だめだ、さっぱりわかんねぇ…」

「さっき教えたばかりだろう。少しはその足りない頭を使って考えろ」


どこから持ってきたのやら、指し棒を片手に教師のように若の隣に立つバージル。
紅とリアラは普段通りだが、こちらはちょっとピリピリしたような雰囲気。その理由はというと…。


「あと一週間でテストかー…やだなぁ…」


ため息をつきつつ、紅は呟く。
そう、あと一週間で中間テストなのだ。いつも上位を取るリアラとバージルは心配ないが、勉強が苦手な紅と若は一週間前から二人に教えてもらっていた。テストが近い今、本当なら部活動は休みなのだが、リアラが初代にお願いしてテスト勉強のために部室を使えるようにしてもらった。放課後になるとここにやって来て、このメンバーでテスト勉強をしている。…とは言っても、リアラとバージルは紅と若につきっきりで教えているから、テスト勉強になっているかは微妙なところだが。
紅の呟きに、リアラは苦笑する。


「テストが好きな人なんていないよ、今だけだから、がんばろう?」

「うん…。ごめんね、リアラも自分の分やらなきゃいけないのに…」

「気にしないで、こうやって教えてるのも充分復習になるよ」


そう言って微笑むリアラに、紅はほっとする。


「いいなー、俺もリアラに教えてもらいてぇよ…」

「何だ、俺では不満か?」

「ああ、特にこの扱いがな」


棘を含んだ若の言葉に、眉間に皺を寄せるバージル。
ともするとケンカに発展してしまいそうな雰囲気にため息をつき、リアラは言った。


「二人共止めなよ。バージルもやり過ぎだけど、若も逃げるからいけないんだよ」

「だってよー…」


ブスーっと拗ねたように唇を尖らせる若に、仕方ないといった風に再びため息をつき、じゃあ、とリアラは続けた。


「ちょっと休憩して、それからまたやろう。バージルはその紐を解いてあげること。代わりに、若は逃げないこと。いい?」


その言葉に、ぱあっと若の顔が明るくなる。


「さすがリアラ!話がわかるぜ!」

「変わり身早いなあ…」

「まあ、ずっとノートとにらめっこしてたしね。ちょっと休もうか、クッキー作ってきたから食べよう?」

「本当!?」

「やりぃ!」

「…なら、俺は飲み物を買ってくる」

「あ、あたしコーラがいい!」

「俺もコーラな!」

「わかった。リアラはミルクティーでよかったな?」

「え?あ、うん」


リアラが頷くと、バージルはそのまま部室を出て行く。なんだかんだ言いつつも聞き入れてくれるバージルのさりげない優しさに、リアラは苦笑を零したのだった。