コラボ小説 | ナノ
 It always will be

「きれい…!」


目の前に広がる景色にリアラは感嘆の声を上げる。
若達と別れ、二人がやってきたのは街を見下ろせる高台だった。夕焼けに染まった建物がキラキラと輝き、神秘的な雰囲気を醸し出している。
髭がリアラに近づきながら言う。


「いいところだろ?この前、初代が教えてくれた」

「ええ、本当に」


嬉しそうに笑うリアラに、髭も笑みを返す。


「今日は、本当にありがとうございました。すごく楽しかったし、紅と若も楽しそうにしてたし…」

「言ったろ?お前のお願いならいくらでも聞いてやる、ってな」


そう言って髭がリアラの頬に手を添えると、その手に自分の手を重ね、リアラは微笑む。


「さて、と。恒例のあれといくか」

「帰ってからじゃないんですか?」

「今日はここでだ」


いつもなら、寮で別れる前に花のプレゼントをするのに。首を傾げながらも、リアラは頷く。


「じゃあ、まずは俺からな」


そう言って髭がリアラに差し出したのは、赤と白の薔薇が一本ずつの小さな花束だった。リアラの顔が綻ぶ。


「赤と白の薔薇…ダンテさんと初めて出かけた時を思い出しますね」

「あいつら見てたら、何だか思い出しちまってな」

「…ありがとうございます」


ふわりと微笑むと崩れないように鞄に入れ、リアラは自分の花束を取り出す。


「じゃあ、次は私ですね。受け取ってください」


そう言ってリアラが髭に差し出したのは、周りをかすみ草で飾った、一本の淡い青色の薔薇が入った花束。花束を受け取りながら髭が言う。


「青い薔薇か…珍しいな」

「最近入荷しだしたんだそうですよ。人気で、すぐになくなっちゃうって店員さんが言ってました」


花屋にいる時、馴染みの店員がそのことを話してくれたのだ。その時、運がいいことにまだ数本残っていて、一本だけ買ったのだ。


「で、今回も花言葉にちなんでか?」

「はい、今回は、いろんな意味を込めて」


髭の問いにはにかみながら答え、リアラは続ける。


「まずは先にかすみ草の花言葉を説明しますね。かすみ草には『感謝』って意味があるんです。今日のことも含め、いつもありがとう、って意味を込めてます。それと、もう一つ」


髭を見つめ、リアラは告げる。


「『切なる願い』」

「『切なる願い』?」

「これからもずっと、一緒にいれますように、って」


リアラの言葉に、髭は目を見開く。


「青い薔薇には『夢叶う』って意味があって、かすみ草の花言葉と合わせて、この願いが叶いますように、って願いを込めたんです。最近知ったんですけど、薔薇の本数にも意味があるらしくって…」

「知ってる。『あなたしかいない』、だろ?」

「!」


リアラは驚きに目を見開く。髭は笑って続ける。


「『一目惚れ』って意味もあるらしいけどな。お前の場合はこっちだろ」

「…知ってたんですか」

「好きなやつに贈るもんなら調べとくさ」

「…敵いませんね」


髭の言葉に、リアラはくすっと苦笑する。


「本当は11本にしようかと思ったんですけど、大きいし、何買ったかばれちゃうな、って思って。一本にしたんです」

「『最愛』、か…愛されてるな、俺は」


穏やかな笑みを浮かべた髭に、リアラも微笑み返す。
髭は再びリアラの頬に手を添える。


「リアラ」


呼ばれてリアラが髭を見上げると、静かに彼の唇が自分の唇に重なった。ゆっくりと彼の顔が離れると同時に、シャラ、と微かに金属の音が耳に届く。


「もう一つ、プレゼントだ」


髭の言葉に首を傾げ、リアラが首元に手をやると、細かな鎖に触れた。胸元に視線を落とすと、細かな装飾が施された銀の蝶が見えた。片羽根だけのそれは自分の動きに合わせて小さく舞うように揺れ、羽根の先には青いビーズが付いている。
じっ、と胸元のネックレスを見つめるリアラに、髭が優しく言葉をかける。


「思った通りだ。…よく似合ってる」


惚けるような笑みを向けられ、リアラは頬を赤く染めて俯く。
リアラの手を取ると、腰を屈めて顔を覗き込むようにして髭は尋ねる。


「そろそろ帰るか」

「…もうちょっと、このままがいいです」


小さく答え、リアラは控えめに髭に抱きつく。フッと笑みを溢すと、髭はリアラを抱きしめ、愛しむように優しく頭を撫でる。
鮮やかな赤色が、二人を染めていた。