コラボ小説 | ナノ
 Speculation of each.

次に訪れたのはシルバーアクセサリーの専門店。若がネロとよく来るというその店は、リングやブレスレット、ネックレスやピアスなどが所狭しと並べられている。決して安くはないが凝ったデザインのものが多く、初めて見る様々なアクセサリーに紅とリアラは目を輝かせた。


「おぉ…カッコイイ…!」


感嘆の声を上げて、二人は共に店内をゆっくりと見て回る。若はそんな彼女たちから少し離れた場所で、あるコーナーを熱心に眺めていた。


「珍しく難しい顔して、どうした?」


覗き込んだ髭は、棚に書かれている文字に小さく頷いて唇の端を吊り上げる。馴れ馴れしく若の肩に腕を置くと、楽しげに言った。


「相談に乗ってやろうか?ん?」


ニヤニヤ笑う髭に嫌そうな顔を向けた若は、肩に置かれた腕を軽くあしらって鼻を鳴らす。


「いらねーよ。俺が選ぶ」


そうじゃなきゃ意味が無いだろ。と、ぶっきらぼうな口調で再び視線を棚に並ぶ商品へ戻す。この店には何度も来ているが、この一角にはあまり意識を向けたことはなかった。改めて見ると、シンプルなものから店主が拘り抜いたもの、人気商品なんてのもあってなかなかに目移りしてしまう。


「年長者として言わせてもらえば、ずっと身につけていられる物がオススメだな」


頼んでもないのに談議を始めた髭にげんなりしつつ、幾つかを手に取った。確かに毎日つけていられる物が良いと思う。自分もその方が嬉しい。そんな未来を想像して自然と口元が綻んだ。


「…俺も何か買ってやるかな」


ぽつり、と髭が呟く。自分も彼女に贈るものを選んでいる時は、あんな風にだらしない表情になっているかもしれないが、それはそれで悪くない。
こうして二人はそれぞれの愛しい彼女に贈るアクセサリー選びに専念したのだった。

***

店を出て開口一番、若が言う。


「こっからは別行動にしようぜ」

「え?」


きょとん、と紅が目を瞬かせているうちに、髭が頷いて同意した。


「そろそろ日も暮れてきたしな…二人きりの時間も必要だろ?…お互い、な」


意味深に微笑んでリアラの肩を抱く。驚く彼女にウインクを返して、髭は若へ視線を向けた。


「ま、頑張って来いよ」

「…言われなくても」


売り言葉に買い言葉。疑問符を浮かべたままの紅の手を引いてバイクへ誘導した若は、じゃあな、とだけ言ってエンジンをかけた。


「よく分かんないけど…っ!またね、リアラ!」

「ちゃんと掴まってろよ!」


エンジン音に負けじと叫んで手を振る紅に呼びかけた若は、彼女がしっかりとしがみついたのを確認して走り出した。遠ざかって行く二人の姿を、目を細めて眺めながら髭が呟く。


「若いなァ」

「…………」


思わず言いそうになった言葉を飲み込んで、リアラは肩を抱いたままの髭を見上げると小首を傾げた。


「私たちはどうしますか?」

「そうだな……ちょっと行きたい所があるんだが、いいか?」

「…はい」


どこであろうと貴方と一緒なら。微笑み合った二人もまた、バイクに跨って夕焼けに染まる路へと走り出したのだった。