コラボ小説 | ナノ
 Flower language

「あー、おいしかった!いいお店だね、ここ」

「喜んでもらえたなら嬉しいわ」

「おっさん、いい店知ってんじゃん」

「元々リアラが見つけたところでな、静かでいい店なんだ」


昼食を食べた四人は満足そうな顔で店を出る。
四人が来た店はリアラと髭がデートの時によく来る店で、木製の床に白い壁の店内は静かで落ち着いていながらも温かみのある店だった。メインはサンドイッチやベーグルなどの軽食だが、リアラのおすすめはデザートのシフォンケーキで、今はちょうど苺の季節ということで苺のシフォンケーキが出ていたので、リアラと紅は食事と一緒にそれを頼んだ。口にするとフワフワした食感にほんのりと苺の甘味がして、紅はすぐに気に入った。ちなみに髭と若はいつも通りストロベリーサンデーを頼んで、おいしそうに頬張っていた。


「ね、次どこ行く?」


リアラ達の方を振り返りながら、紅が尋ねる。リアラはうーん、と少し考え込むと、何かを思いついたのか、口を開いた。


「じゃあ、一つ行きたいところがあるんだけど、いいかな?」

「行きたいところ?どこ行くの?」

「えっとね、お花屋さん」

「花屋?」

「うん」


首を傾げる紅に笑顔で頷くリアラ。リアラの隣にいた髭はああ、と頷く。


「あの花屋か」

「はい」


髭の言葉に頷くリアラを見て、紅はああ、二人がよく行くところか、と察した。


「いいよ。リアラにはあたしの行きたいところ付き合ってもらったし」

「ありがとう。若もそれでいいかな?」

「紅がいいって言うなら、俺は構わないぜ」

「ありがとう」


じゃあ行こっか、と言うリアラの言葉に頷き、紅達は花屋に向かった。

***

「ここだよ」


歩き始めて数十分後、リアラがある店の前で足を止めた。
その店はクリーム色の壁の小さな花屋で、店先にはいろんな種類の花がところ狭しと置かれていた。


「わ、きれい…!」

「ダンテさんと出かけた時に必ず来るの。いろんな種類があるんだよ」


感嘆の声を上げる紅にリアラが説明していると、こちらに気づいたのか、店の中から若い女性の店員が姿を現した。


「あら、いらっしゃい。また来てくれたのね」

「こんにちは」


リアラが軽く会釈をすると、店員はリアラの隣にいた髭に目をやり、にこりと微笑んだ。


「いつも仲がいいわね。うらやましいわ」


店員の言葉に微かに頬を染めるリアラを見て緩く口角を上げると、髭はリアラの肩に手をやり、抱き寄せる。やれやれと呆れぎみに紅がその様子を眺めていると、自分達に気づいたのか店員がこちらを見た。


「今日はお友達も一緒?」

「あ、はい」

「そう、ゆっくり見ていってね」


笑顔の店員に促され、四人は店の中に入った。

***

「ほんとにたくさんあるねぇ…」


紅は感嘆のため息をつく。店内は数え切れない程の花で彩られ、ついつい目移りしてしまう。そんな紅の様子に、リアラはくすり、と笑みを溢す。


「いろいろあって楽しいよね」

「うん。こんなにたくさんの花、初めて見た」


そう答えると、紅はリアラを見つめて尋ねる。


「ねえ、何で二人は必ずここに来るの?」

「えっとね…」


頬を染めながら恥ずかしそうに目を伏せると、リアラは話し始めた。


「初めてダンテさんと出かけた時にね、たまたまこのお店に寄ったの。私、花言葉に興味があったから、ダンテさんに花言葉を教えながらお店の中を回ってたんだけど、その時ダンテさんが『お互いに花を買って渡そう』って言い出して、お互いに見せないようにしながら二人でそれぞれ花を買ったの」


近くにあった花を手に取りながら、リアラは続ける。


「帰り際にお互いに買った花を渡したんだけど、すごくびっくりしたわ。だって、同じ花を買ってたんだもの」

「同じ花を?」

「うん。お互いにね、薔薇を買ってたの。私は赤い薔薇、ダンテさんは赤い薔薇と白い薔薇」


その時を思い出して、リアラはくすくすと笑う。


「私はダンテさんのイメージで、ダンテさんは自分と私のイメージでその花を買ったんだけど、どっちも花言葉なんて考えてなかったの。だから余計、薔薇の花言葉を意識しちゃってね」

「薔薇の花言葉って、どんなの?」


紅が尋ねると、リアラは笑顔で答えてくれた。


「赤い薔薇は『あなたを愛します』、白い薔薇は『私はあなたにふさわしい』。薔薇は色によって意味が違うし、他にも意味があるんだけどね、なぜかその言葉が浮かんだの」

「うわあ…何か告白みたい」

「そうだね。私がダンテさんにそのことを伝えたら、驚いた顔をした後にすぐ笑ってね、『合ってるな、その言葉』って言ったの。『俺が傍にいてほしいのはリアラだけだしな』って」

「うわぁ、キザ…」

「ふふ、でもね、すごく嬉しかったんだ。すごく大切にしてもらってるんだなあ、って」


そう言って、リアラは立ち上がる。


「それからお互いに花を贈ることが約束事になって、出かける度にここで花を買って帰り際に渡すの。ダンテさん、時々花言葉を調べてるらしくて、それを聞く度にかわいいなって思うの」

「おっさんにかわいいなんて言えるの、リアラだけだよ」


そう言いつつも、紅は目を細める。


「けど、うらやましいなぁ…。あたしもそういうのやってみたい」


ちょっとロマンチックだな、と紅が心の中で思っていると、リアラが笑顔で言った。


「じゃあ、紅も一緒に花を買おう。花言葉なら私が教えてあげるから」


ね?、と言うリアラにつられ、紅は笑顔で頷く。


「…うん」


たまにはこんなのもいいかもしれない、そう思いながら、紅はリアラと一緒に花を選び始めた。