コラボ小説 | ナノ
 Double Drive!

「若、ちゃんとバイクで来た?」

「ああ、おっさんに言われてたからな」


店の外に出た途端、リアラの口から出た言葉に、紅は首を傾げる。


「バイクで?」

「うん。昨日の夜、ダンテさんに頼んで、若にバイクで来るように伝えてって言ったの」


微笑みながら、リアラは続ける。


「電車で行くと時間がかかるし、車はダンテさんしか運転できないから、バイクなら若も運転できるし早いからいいかなって思って」

「なるほど…」


感心していた紅は、ふとあることに気づく。


「ち、ちょっと待って!ってことは、あたしダンテのバイクに乗るの!?」

「そうだよ」


あっさりと返され、紅は言葉を失う。


(つ、つまりそれって、ダンテとすごい距離近いってことじゃん…!)


いつものやり取りですらドキドキしてしまうというのに、ダンテと一緒にバイクに乗ろうものなら、どうなってしまうかわからない。
オロオロとする紅の耳に、リアラの声が届いた。


「わ、すごい!若のバイクもかっこいいね!」


リアラの言葉に、紅が顔を上げると、


「わ…!」


目の前には、二台の大型バイクがあった。一台は黒いバイク、もう一台は真っ赤なバイクだった。
陽射しを受けて、二台のバイクのボディがピカリと光る。


「かっこいー…!」


キャッキャとはしゃぐ紅に笑みを溢しながら、リアラは口を開く。


「真っ赤な方が若のバイクだって。若らしいよね」

「確かにね」


大きく頷きながら、紅は髭を見る。


「おっさんは赤じゃないんだね。車は赤なのに」

「赤でもよかったんだが、落ち着いたやつがほしくてな」


この辺りがダンテと違う部分なのだろう、興味深そうに紅は二台のバイクを見比べる。


「時間が惜しいし、そろそろ行くか」

「そうですね」


髭とリアラのやり取りに、紅ははっと我に返る。


(そ、そうだった、あたし、ダンテと一緒にバイクに乗るんだった…!)


再びオロオロとし始めた紅の頭を、苦笑しながらリアラは撫でる。


「大丈夫だよ、紅。私だってダンテさんのバイクに乗るのまだ二回目だもの。ドキドキするよ」


心を読んだかのように言うリアラに、紅は呟く。


「ほん…と?」

「うん、本当に。近いんだもの、緊張するよね」


そう言って優しく笑うリアラに、紅は肩の力が抜けたような気がした。


「ありがと、リアラ…」

「ううん」

「おーい、行くぞー」

「あ、はーい。行こ、紅」

「うん」


頷くと、紅はリアラと一緒に二人の元へ駆け寄る。


「じゃあ若、紅のことよろしくね」

「おう」


紅を若の前に立たせるようにすると、リアラは髭の元へ向かう。
恥ずかしそうに視線をさ迷わせる紅に、若は優しく笑いかけてやる。


「んな緊張しなくていいから。いつも通りにしてろ」

「う、うん…」


紅が頷くと、若は紅にヘルメットを手渡す。


「ちゃんと被っとけよ。あ、帽子は取れよ?潰れちまうから」

「わかった」


紅は帽子を取ると、鞄に仕舞う。
若はバイクに跨がると、後ろの座席を叩く。


「ほら、乗れ」

「う、うん」


おずおずとバイクに近寄ると、若の後ろの席に跨がる。


「ちゃんと捕まってねーと落ちるからな。恥ずかしいとか思ってないで、ちゃんと捕まれよ?」

「わ、わかってるよ!」


若に意地悪な笑みを向けられ、紅は喚くように返した。


「よかった、緊張ほぐれてきたみたい…」


若と紅のやり取りを見て、リアラは安堵の息をつく。
最初は戸惑いと恥ずかしさでぎこちなかった紅は、今では若といつものやり取りを繰り広げている。若が上手く緊張をほぐしてくれたのだろう。
リアラが二人を見守っていると、ふいに頭に温かなものが降ってきた。
温かなものの正体は髭の手だった。髭はリアラの頭から彼女の頬へ手を滑らせると、意地悪な笑みを浮かべる。


「少しは俺のこともかまってほしいもんだな。デート、なんだろ?」

「っ!」


至近距離で告げられ、リアラは顔を赤く染める。
リアラが恥ずかしさに顔を逸らしたその時、軽いリップ音が響いた。思わずリアラは顔を上げる。


「せっかくのデートなんだ、楽しまないと、な?」

「〜っ!!」


ますます赤くなったリアラに満足そうな笑みを浮かべると、髭はヘルメットを手に取った。


「リアラ」


名を呼ばれ、リアラが顔を上げると、髭はリアラの髪を手に取る。優しい手つきで丁寧に髪を内側に寄せると、そのままヘルメットを被せた。
ぱちぱちと目を瞬かせるリアラに、髭は優しく笑いかける。


「この前みたいに髪が乱れたら大変だろ?」

「ダンテさん…」


以前バイクで出かけた時、ヘルメットの被り方が下手で髪が乱れてしまったのを覚えていてくれたのだろう。恋人の優しさが嬉しくて、リアラは柔らかな笑みを浮かべる。


「ありがとうございます」

「そんな大したことじゃない。さ、そろそろ行くか」

「はい」


髭の差し出した手に自分の手を重ね、リアラは髭のバイクに乗った。

***

出発して約三十分、木々や町並みを背にバイクを走らせ、四人は隣り街に着いた。
自分達の住んでいる町とは違い、建物が立ち並ぶこの街は多くの人で賑わっていた。
バイクを駐車場に停め、四人は街を歩く。


「すごい…」

「ここ、いろんなお店があるから、見てるだけでも楽しいよ」

「広いな…」

「ここら辺では一番大きい街だからな」


ワイワイと話しながら、四人は街を歩く。


「リアラ、どこ行く?」


紅はリアラに尋ねる。
自分と若はこの街に来るのは初めてだ。だったら、何度も来ているリアラに案内してもらった方がいいだろう。
んー、と考えるしぐさをすると、リアラは言った。


「じゃあ、近くのショッピングモールはどうかな?服とか靴とか、いろいろ見れるよ」


どう思います?とリアラに尋ねられ、髭は頷く。


「いいんじゃないか?あそこならいろいろな店を見て回れるしな」

「本当?じゃあ、そこに行きたい!」

「若はどう?」

「俺は何にもわかんねえからな、リアラに任せる」

「じゃあ、決定ね」


リアラの案により、四人は近くのショッピングモールに行くことになった。